週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

【大学野球】侍ジャパンで「最大派閥」も。なぜ富士大から好選手が輩出されるのか

 

マイナス10度でも屋外で投げ込み


富士大は北東北大学リーグで今春、9連覇を狙う(左は豊田監督、右は左腕エース・鈴木)


 北東北大学リーグに所属する富士大は昨秋まで8連覇中。これまでの最長は青森大の9連覇(1992年秋〜96年秋)であり、富士大は2018年春、この連盟記録に挑戦する。

 就任5年目の富士大・豊田圭史監督はズローガンを『覚悟』に定めた。

「困難な道になると思いますが、チームが一体となって乗り越えていきたい。やるからにはリーグ8連覇、9連覇の記録をつくる。大学日本一も常に目指しています」

 今年、富士大がある岩手県花巻市は例年以上に雪が多く、約70センチが積もっており、グラウンドを使うことはできない。「日本最大級」と言われ、300メートルトラックを有する「スポーツセンター」内には25メートル×63メートルの人工芝練習場(室内)があるが、豊田監督は「スパイクを使いたい」と、今年から屋外を求めて遠征練習を実施している。3月1日からの沖縄キャンプを控えた2月中は9日間、バスで片道2時間をかけて、宮城県内の高校のグラウンドを借りて汗を流している。

「昨年春の序盤は動きが悪かったんです。だから、早く始動したい、と。ウチのリーグ戦は勝率制(一部6校で各2試合の計10試合)。1敗したら優勝が厳しくなり、2敗したら他力、3敗したらまずない。だからこそ、取りこぼしが許されず、スタートダッシュが大事になってきます」

 とはいえ、投手陣はマイマス10度の中でも、屋外で投げ込みを行う。投手プレートとホームベース付近には屋根が付いているが、豪雪であり、当然、吹き込んでくる。除雪し、ぬかるんだ足場で50球ほどはブルペン投球。相当な精神力が身に付くことが想像される。

潜在的に努力家


 2018年の富士大にはプロ注目の149キロ左腕・鈴木翔天(4年・向上高)がおり、147キロ左腕・佐々木健(4年・木造高)もプロ志望の方向性。また、野手では四番・遊撃の佐藤龍世(4年・北海高)が卒業後のプロを目指すスカウト注目の好選手であり、ドラフト戦線においても、富士大はにぎやかになりそうだ。

 昨年11月に優勝を遂げたアジアチャンピオンシップの侍ジャパントップチーム25人には、3選手の富士大OB(西武多和田真三郎山川穂高外崎修汰)が名を連ねている。出身校別では「最大派閥」を誇った。最近の躍進は目覚ましいものがあり卒業後、プロでも活躍できる要因は何か。3人の共通点を豊田監督はこう明かす。

「練習熱心。(グラウンド、合宿所の)周りに何もなく、野球に打ち込める環境ですが、潜在的に努力家です。実力はもちろんのことですが、人間性も優れている。プロは監督、コーチに気にかけてもらい、使ってもらえるかの世界。彼らには素直さがあります」

「大きく羽ばたく人間に――」が翔天(そら)の由来であるエース・鈴木も「覚悟」を持って、岩手にやってきた一人である。

「高校野球を引退した段階から、大学は地方でやると決めていた。しかも、できれば遠い場所で……。4年間を野球に費やせるし、誘惑が全くない(苦笑)。最適の大学だと思って進学しました」。豊田監督は言う。「鈴木は性格が良く、社会性もある。どうにかして、良い形で送り出してあげたいと思う」と、プロ入りへの後押しを誓っている。

 富士大が北東北大学リーグ9連覇を狙う上で立ちはだかるのが、最大のライバル・八戸学院大である。同大学には最速152キロを誇る左腕・高橋優貴(4年・東海大菅生高)がいる。鈴木は「1年生から投げていて、ずっと、意識してきた存在。負けたくないです」と闘志を燃やす。2人の直接対決には、NPBスカウトが大集結するのは確実だ。プライドをかけた投げ合いから、早くも目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング