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【MLB】エプスタイン編成本部長6年越しでダルビッシュ獲得

 

ダルビッシュの能力を一番に評価したカブスのエプスタイン編成部長(中央)。今季ダルビッシュはその期待に応えられるか!?



 カブスのセオ・エプスタイン編成本部長はこれまで3度世界一のチームを創り上げ、まだ44歳だが、将来野球殿堂入りは間違いなしと言われている。選手の才能を見抜く眼力は当代一と言って良い。 

 現地時間2月13日、ダルビッシュ有の入団会見で、実は6年越しの獲得だったと明かしてくれた。11年オフ、レッドソックスからカブスに移って、そのオフ日本ハムからポスティングされたダルビッシュ獲得に動いたが、当時のチームは前オーナーの残した負債で資金不足。入札額は、5170万ドルで交渉権を得たレンジャーズに遥かに及ばなかった。

「それでも2番目だったと聞いたけどね」と懐かしむ。その後ダルビッシュはメジャー6年間で56勝42敗、防御率3・42。トミー・ジョン手術で1年半を棒に振り、先のワールド・シリーズでは2試合連続1回2/3 降板の苦汁を舐めた。だが彼の評価は変わらない。「2試合のサンプルで判断しているようでは正しい仕事をしたとはいえない。6年を通せば、MLB史上最高の三振奪取率をマークしたエリート投手であると分かる。ボールにすごいスピンをかけられるし、回転量をコントロールしたり、変化球の軌道も変えられる。パワーピッチャーであれだけ多くの武器を持つ者はほかにいない。もっと良くなる」

 31歳に6年契約はリスクが高いはずだが、逆にこう言う。「彼を獲得するには良いタイミング。この年齢ゆえ、高い身体能力に精神面も合いまって成熟したアスリートになっている。今の彼は特別なことを成し遂げる準備ができている」。とはいえ、今回獲得できたのは幸運でもあったと明かした。「このオフ、うちの補強希望リストのトップに上げていたけど、現実的ではないと感じていた」。

 カブスは生え抜きの若手野手が順調に育っているが、投手は育たず、チームの泣き所。急務は投手陣の層を厚くすることで、育てられないなら、まとめて買うしかない。頭数優先で、FA市場で先発のタイラー・チャットウッド、ブルペンのブランダン・モロウなど7人のFA投手を補強した。その上で、事前に年俸2500万ドル前後と予想された)ダルビッシュにも行くのは資金的に厳しかった。

「それがウインターミーティング前後にFA市場を見直してみたら、うちも可能と判断できた。本人に会って互いをもっと知り合いたいと思った」。ヤンキース、ドジャーズなど、大都市チームがぜいたく税のルール改定で財布のヒモが固くなり、競合するのはツインズなど小都市チーム。オファーの高騰はない。

 そこで12月18日、ダルビッシュの住むダラスを訪問、ひざ詰め談判で口説いた。「君の投げる球は誰にも負けていない。わわれなら、もっといい投手にできる」と球団の最新鋭のサポートシステムを売り込んだ。

 ダルビッシュも「自分の良い所とか、カブスに来たら、こういう事ができるよって色んなプレゼンをしてくださって。全部がすごく、最初から最後まで印象に残ることばかり」と密度の濃い3時間半を、会見で振り返った。こういったプロセスを経て2月、キャンプ直前に6年1億2600万ドルで合意した。果たして当代一の目利きの判断は正しいのか。言葉通りになるのか。カブスのダルビッシュがとても楽しみなのである。

文・写真=奥田秀樹
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