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MLB最新戦略事情

【MLB】MLB機構側と選手間のルール改正闘争は続く

 

今回は選手会側の意向をのみ、ピッチクロック導入を見送ったマンフレッドコミッショナー。マウンドへ行く制限は付けたが……



 2月20日、フェニックスでロブ・マンフレッドMLBコミッショナーが会見。前日に詳細が出た新しい時間短縮ルールについて説明した。ピッチクロックはあきらめ、コーチ、捕手などがマウンドに行く回数を6度に制限するなどが主である。

「(クロックを)一方的に導入することもできたが、選手と同意するほうを選んだ」と言う。この1年、口にしてきた思い切った改革はできなかった。選手会のトニー・クラーク代表は「われわれは時短問題にコミットしてきたし、ファンにテキパキした野球を見せようとしている。しかしながらゲームの結果も、形も変えてしまうルール変更には慎重にならざるを得ない」と声明を出した。

 思い出すのは2月1日のオーナー会議。コミッショナーは1月、ピッチクロックを含んだ新しいアイデアが選手会に否決された経緯を説明し、「その後、選手たちはクロックなしでも時短は可能と発言している。それならそれでトライしてみようと考えている」と語り、その時点で選手会に二者択一を迫った。短縮の目玉と言われたピッチクロックなしで、18年シーズン、9イニングの平均試合時間が2時間55分以内なら、19年もクロックなし。19年はさらに目標を上げ、平均が2時間50分以内なら20年もクロックなしにするというもの。「クロックを導入するかどうかを、選手の手に委ねる。それでうまく行けば両者にとってW(WIN)だ」と説明した。そしてもしこの案も受け入れないなら、ピッチクロックの一方的導入もあると発言、「これからの10日間が重要」と付け加えた。

 キャンプのレポートデーまでに合意し、新シーズンに間に合わせる狙い。だが選手会はこの提案も受け入れなかった。そもそも選手たちは機構側に協力する気が失せていた。このオフはFA市場が冷え込み、多くの選手が未契約のままでリーグへの不満が鬱積(うっせき)していた。時短ルールとは、言い方を変えれば、MLBを今後も収益性の高い娯楽産業として維持していくための工夫である。

 実際にMLBは儲かっている。しかしながら、このオフのFA選手への金額提示にはまったく反映されていなかった。見返りが得られないなら、協力する気持ちはなえる。タイミングが悪かった。今回、一番大きな変更になる回数制限も遵守(じゅんし)されるかどうか大いに疑問だ。
 
 最近、捕手がマウンドに行く回数が増えたのは、ハイテクカメラ、ダグアウト、ビデオ室、選手を巻き込んだサイン盗みが横行しているから。捕手はサインを変えるためにマウンドに行かざるを得ない。そこで機構側はビデオルームと、ダグアウトの間に電話線を設置し、会話の模様を傍受し、監視するアイデアを出した。

 しかしながらこれを実戦でテストする時間がない。「オープン戦はどうか?」と訊かれたカブスのジャド・ホイヤーGMは「オープン戦で、サイン盗みをするチームはいないし、サインを変える必要もない。テストにならない」と苦笑いしていた。

 同球団のウイルソン・コントレラス捕手は「大事なのはチームの勝利。罰金を払っても、必要とあればマウンドに行く」と早くもルール破りを宣言した。この問題、まだまだ時間がかかるのである。

文・写真=奥田秀樹
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