今年で60周年を迎えた週刊ベースボールの過去の記事を紹介。今回は1986年3月、西武に入団した大物新人・清原和博のオープン戦初戦のリポートだ。 オープン戦初打席は三振
西武・清原和博
母の力は偉大である。息子のちょっと弱気な意気込みをたった一言でたしなめてしまう。
「(テレビで見る和博は)フォームが小さくなっている。当てにいって失敗するくらいなら、思い切り振って三振かホームランか、どっちかのほうがいい」
注目のルーキー・清原和博が迎えたオープン戦初戦。3月1日のその日を前にして清原が夜、大阪府岸和田の実家へ電話を入れたら、母親・弘子さんは清原にそうアドバイスした。
西武の、というより球界全体が関心を寄せる清原の一打。キャンプとはいえ、ぶざまな空振りを演じたくないと、知らず知らずのうちにセンター返しの、清原らしからぬ打撃になっていたのを、母・弘子さんは「息子の持ち味はホームラン」とたしなめたワケだ。
なるほど、オープン戦初戦の
広島戦では、目いっぱいバットを振って、左腕・
川口和久から三振と四球、二番手の
白武佳久に対しても外角スライダーを空振りして三振。母との“約束”を果たした?
「力み過ぎです。アガらなかったけど、川口さんの球は速く見えました。タイミングが少し遅れてしまった」
この時点では母のアドバイスは“裏目”と出たかっこうになったが、あの
長嶋茂雄が開幕戦で4打席4三振を喫してスタートしたのは有名な話。オープン戦で2三振は
田淵幸一(元
阪神)と同じなのだそうだ。
思い切って振ったことこそに意義がある。翌2日の第2打席では、広島の左腕・
山本和男からバットを折りながらもセンター前へ、プロ入り“初ヒット”。もうすぐホームランも飛び出すサ。
(週刊ベースボール1986年3月17日号)
写真=BBM