今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『三原の握る5000万円のナゾ』
今回は『1960年12月7日号』。定価は30円だ。グラビア巻頭は『新星巨人入り』で、
高林恒夫(熊谷組)、
山崎正之投手(法大)の巨人入り。まだ
水原茂監督の進退ははっきりしていないが、会見では、代理で
川上哲治ヘッドコーチが出席している。本文巻頭の『監督問題嵐の中の巨人選手の発言』によれば、水原監督は長男の結納のため欠席したらしい。
監督問題について巨人の選手たちの発言も集められていた。
広岡達朗は、
「聞けば水原さんはいままで、巨人との間に契約というものがなかったそうですね(以前、契約書を交わしたことがない、という水原の発言があった)。これからはちゃんと契約してアメリカ流に割り切っていくのが当然だと思うね。
水原さんがやめれば、川上さん以外に監督はないでしょう。ぼくと川上さんの仲がよく云々されるけど、ぼくはなんとも思っていない。川上さんの下でも喜んでやりますよ」
新人補強においては、『三原の握る5000万円のナゾ』という記事があった。球団に「1億円を用意してくれ」と言いながら、高林、さらに早大のスラッガー、
徳武定之の争奪戦から早々に降りてしまった大洋・
三原脩監督の話だ。現在、
長田幸雄ら6人の獲得に成功しているが、契約金の総計は5000万円。つまり5000万円あまっているという。
三原監督は「1億円など言った覚えはない」と否定。さらに次のように語っている。
「私はスカウトの人たちに言ってあるんです。自分で実際に見た選手以外は取るなって。どこの社会に海のものとも山のものともつかぬものに何千万円ものカネを投じるところがあるか。素人ののど自慢だって鐘を3つ鳴らした人だけが歌手の道に入るチャンスがあるのです。ところがプロ野球の場合は、鐘も鳴らさぬうちから大金で契約しようとする。モノになるか分からない選手のために、野球界の秩序を乱してまで入団させることはないですね」
実は1959年3月、新人選手の契約金の上限を税込で1000万円としたのだが、10月31日、
井上登コミッショナーから、疑わしき例が多いと、この申し合わせを守るよう警告が発せられていた。
その渦中の一人で国鉄入団を果たした徳武は『
佐々木信也連載対談』に登場。最後は何やら意味深な終わり方になっている。
佐々木 三原さんには会ったの。
徳武 ええ、お会いしてやっぱりいい方だなって感じがしました。
佐々木 大洋へという気持ちは起きなかった?
徳武 いやまあ、一時、それならって考えた時期はあったですね。
佐々木 今までの例では監督さんの人柄にほれて入っちゃう場合が多かったんだ。ところが今年の有望な新人はそういうことを一度もいってない。これは特徴だね。
徳武 そうですか。
以下、宣伝。
いよいよ週べ60年記念シリーズ『巨人編』が発売中(一部地域を除く)。次回は
日本ハム予定です。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM