長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 止めようと後を追っただけなのに……
巨人時代の三原脩がバットを持って審判室に殴り込みをかけたという伝説があるが、実際にはかなり違う。1938年の春季、秋季の覇者が戦う年度優勝決定戦の第1戦だった。
試合中の審判の判定にカッカしていた巨人・藤本定義監督が、試合が終わるや否や審判控え室にすっ飛んでいく。助監督だった三原はそれを止めようと後を追った。予想どおり、藤本監督は猛烈な勢いで罵声を浴びせかけていた。
そのとき三原はすでに帰り支度をしており、手にはノックバットを持っていたのだが、その姿を見て、三原がバットを持って審判室に殴り込んだと言われただけなのだ。
後日、処分が下されたとき、三原は腹が立ち、バカバカしくなった。何もしていないのに罰金と出場停止は納得できないと、パッと引退、退団を決めた。したがって、このときの連盟からの処分は藤本監督のみに下されている。
写真=BBM