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センバツ現場発

センバツ現場発/膳所高のデータ野球を打ち破った日本航空石川高・上田優弥

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

第1打席を終えて、切り替えた


1日本航空石川高の四番・上田は膳所高との2回戦で2安打2打点。相手の大胆なポジショニングに心が動いたこともあったが、最後はしっかりと結果を残した


 21世紀枠で出場した膳所高と言えば、ユニフォームを着ない専属のデータ班2人が、徹底的に対策した内、外野のポジショニングが持ち味だ。

 2回戦で対戦した日本航空石川高で高校通算26本塁打を誇る左のスラッガー・上田優弥(3年)は試合前「気にせず、自分たちのバッティングを貫いていく」と強気だった。

 しかし、ゲームが始まると暗転する。1回裏二死二塁の先制機で打順が回ってきたが、二遊間を抜けそうな痛烈な当たりも、遊ゴロに終わった。「良い打球だな? と思ったら、ショートがそこにいて……。よく、調べているなと思った」。さすがの主砲も、お手上げ状態。

 しかし、「第1打席を終えて、切り替えた。やはり、自分の打撃をしよう!!」と4回の第2打席では左越え二塁打で待望の先制点を挙げた。だが……。「打った瞬間に『ウワッ!!』と思った」。相手左翼手が落下点に入りそうになったのである。「伸びてくれてよかった」。超高校級の鋭いスイングとライトからレフトへの浜風が手伝い、結果的に左翼手の頭上を越えていったのである。

 第3打席では狭い一、二塁間を抜けた打球は、そのまま右翼フェンスまで到達。シフトをかいくぐる二塁打も適時打となり、2安打2打点と、四番・上田のバットがチームに勢いをもたらし、10対0で快勝した。

 10失点で完投した膳所高のエース・手塚皓己(3年)は言う。

「野手からは、逆球を投げると困ると言われる。その逆球を痛打された。序盤は自分の特異なフォームで打ち損じ、ポジショニングの網に引っ掛かってくれたが、後半はタイミングが合わされた。夏へ向けて、精度を高めていきたい」

 大胆な守備位置を敷けるのも、投手の制球力が大前提としてある。膳所高・上品充朗監督は「力のない我々には、時間をかけてきたポジショニングを、信じて戦うしかない。違うところへ飛んだら仕方ない。思い切ったシフトでも、その打者にとっては定位置になることもある。野球って面白い」と語った。9イニングトータルで戦う難しさを痛感したが、膳所高は今後もこのスタイルを追求していく。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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