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センバツ現場発

センバツ現場発/夏を見据えながら腕を振る国学院栃木高のストッパー・宮海土

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

プロ顔負けの調整法


国学院栃木の左腕・宮は英明高との1回戦に続き、延岡学園高との2回戦でも好救援。投手3本柱を誇る不動のストッパーとして、チームの快進撃を支えている


 野球には流れがある、とすれば、国学院栃木高に味方していた気がする。5対5で前半5回を終え、グラウンド整備に入った。4回までは1対5と延岡学園高が優位に試合を進めていたが、5回表に国学院栃木高が相手のミスにつけ込んで一挙4得点で同点に追いついた。

 国学院栃木高は昨夏の新チーム結成以来、3年生の3投手の継投で勝ち上がってきた。先発は準備が万全で責任感のある右腕・水澤龍太朗(背番号1)、2番手は仕上がりの早さが武器の左腕・渡辺匠(同11)、そして試合を締める3番手は最も気が強い左腕・宮海土(同10)。三者三様の3本柱が、3イニングずつをリレーしていくのが必勝パターンである。

 英明との1回戦は4回途中に渡辺が救援。イニング間に交代するのは初めてのケースだったが、思い切り腕が振れる特性を生かし、3点リードから1点差とされたピンチを併殺で切り抜けた。7回からは3イニング、宮がそのまま1点差を守り抜き、18年ぶりのセンバツ勝利へと導いている。

 延岡学園高との2回戦は劣勢の展開。水澤は1回3失点で降板し、渡辺も追加点を奪われ、厳しい状況で試合中盤を迎えたが、国学院栃木高は先述のように、5回に4点ビハインドを追いついている。

 宮はプロ顔負けの調整法、ルーティンを持っている。試合前までにキャッチボールなどで1回肩を作るが、心のスイッチはまだ入れない。「早く入れ過ぎても、もたないですから(苦笑)」。2、3回になったころにベンチ裏で体を温め、グラウンド整備が終わったころからブルペンで投球練習を始める。

チームの目標は夏の甲子園ベスト8


 延岡学園高との2回戦に、時間を戻す。宮が一塁ブルペンで捕手を座らせ、仕上げの段階になった6回表、先頭の島田侑希(3年)が勝ち越しの右越えソロ。さらに近藤翔真(3年)の適時打でリードを2点に広げる。

「良い流れでマウンドに上がることができた」

 宮は同点の場面でのリリーフを想定して準備していただけに、心理的にも楽な状況だったという。試合前、延岡学園高・三浦正行監督は「終盤、相手にリードされ、宮君が出てくる展開だけは避けたかった」と語っていたが、まさしく最悪の“流れ”となってしまった。

 宮は8回にも味方打線から2点の援護をもらい、9対5で逃げ切った。4イニングのロングリリーフとなり「ちょっと疲れました……。(3イニング以上は)覚えていないくらい」と言いながら、気持ち良さそうに汗をぬぐった。宮は2試合、計7イニングで得点を許していない。

 国学院栃木高は3回戦で智弁和歌山高と対戦する。母校を率いる柄目直人監督が一番打者として出場した18年前(2000年)、準決勝で敗退(2対10)した因縁の相手である。しかし、宮は「もっと勝ちたいですが、チームの最終目標は夏。夏につながる良い経験をしていきたい」と無欲を強調する。

 その真相を、ブルペンで投手の士気を高める控え捕手・笹川晴輝(3年)が明かす。

「昨年秋の関東大会準々決勝で慶應に2対3で負けて、あと一歩で甲子園を逃した(事実上、関東4強がセンバツ出場の当確ライン)。ここに出られるとは思ってもいませんでした。関東大会以降、チームの目標は夏の甲子園ベスト8に設定しました。と思ったら、1月26日にセンバツ選出(関東・東京の一般選考枠は6。東京2位校・佼成学園高と関東5位校・国学院栃木高との比較でラスト1枠を獲得)。夏に向けて、これを利用しない手はない。特に投手は大事ですから、急ピッチで甲子園へ向けて仕上げてきたんです」

 栃木の夏は、昨年まで作新学院高が7年連続出場。国学院栃木高は3年連続、決勝で涙をのんでいる。昨夏も1対15と、屈辱的な大敗を喫した。昨秋は決勝で同校にリベンジを果たしたものの、夏の悔しさは夏にしか晴らせない。

 宮は2年春に一度、エース番号「1」を背負ったことがあるが、地区予選敗退と良い思い出はないという。

「このセンバツは(10でも)仕方ないですが、春の県大会から夏の甲子園まではずっと、1を着けたい。このセンバツは、今後に向けての試合ですし、アピールの場にもなる」

 甲子園での激しい競争が、国学院栃木高のチーム力を高めている。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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