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センバツ現場発

センバツ現場発/大阪桐蔭高に打ち勝つ! 14年夏決勝のリベンジを誓う三重高

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

大阪桐蔭高を上回る準備をしてきた自負


三重高はセンバツ優勝した1969年以来、49年ぶりの4強進出。準決勝では2014年夏の決勝で惜敗した大阪桐蔭高と対戦する。写真は準々決勝(対星稜高)で本塁打を放った梶田(背番号8)をベンチで出迎える小島監督


 明日(4月3日)の準決勝を前に、2日は休養日で、4強進出校は調整を行った。優勝した1969年以来、49年ぶりに準決勝を戦う三重高は、第2試合で史上3校目の「春連覇」を目指す大阪桐蔭高と対戦する。

 三重高を率いるのは、今大会最年少28歳の小島紳監督である。中京大中京高では捕手で、三重大では主将を務めた。2012年に三重高に赴任すると、14年夏は副部長(コーチ)として甲子園準優勝。昨夏限りで中村好治監督(現総監督)が退任し、代わりに8月から同校を指揮している。

「中村監督の意志を継ぎ、大きく変えるところはありません。総監督からは好きなようにやれ!! と言われていますので、野球ではバントをしなかったり、積極的に走らせるようにしています。野球で怒ったことはない。学校生活、日常生活のことばかり。ウチは部員も多い(2学年で97人)ですから苦労はありましたけど……。苦しみましたね」

 昨秋の東海大会4強。監督として初めて率いるチームをセンバツへ導くと、甲子園初さい配で準決勝まで進出した。

「僕自身も勉強やと思います。選手に助けられている。一戦一戦、成長してくれて頼もしくなっています。(初戦、2回戦の)日大三高との試合で自信をつけて、一つひとつチームとしても士気が上がっている」

 現在の3年生は2014年夏の甲子園準優勝にあこがれ、16年4月に三重高の門をたたいてきたメンバーだ。

「意識が高く、力のある子たちです。ただし、大阪桐蔭のようなスーパースターかと言えば、まったくもって、そんなことはない。地道にコツコツと成長し、2年で立派になった。反骨心がある」

 大阪桐蔭高とのリベンジマッチは、小島監督にとっても特別な思いがある。

「あと一歩のところまで追い詰めたが……。(3対2から)逆転されて悔しい思いをした(3対4)。中村総監督のためにも雪辱を晴らしたい」

 超高校級軍団・大阪桐蔭高を上回るだけの準備をしてきた自負がある。三重高と言えば、バントを使わない積極打法が持ち味。二番・浦口輝(3年)はチームトップの打率.500(12打数6安打)をマークしており、乙訓高との3回戦では決勝ソロ本塁打を放っている。小技を駆使する「つなぎの二番」とは違う。

「高校野球もロースコアのゲームが少ない。取れるときに取っておかない、と。二番には振れて、しかも足がある選手。それが、浦口だったわけです」

強力打線の背景にある斬新な2つの取り組み


 小島監督自身は高校時代に「八番・捕手」だった。

「その打順をやってきた身からすると、その場面(犠打の状況)で打ちたいと思ったのが本音。捕手としても、強攻でこられるほうが嫌なんです。手堅い野球をするのは、その前提として戦力がないとできません。ウチはそこまでの選手はそろっていない。たたき上げの集まり。スーパースターに勝とうと思ったら、打って打って、相手をのみ込んでしまうほうが良い」

 フルスイングを貫く強力打線の背景には、斬新な取り組みが2つある。

 中村総監督時代から引き続いて、フリー打撃でマシンを使ったことがない。

「マシンだと1・2・3になる。打撃はタイミングが大事ですから、人が投げたボールのほうが効果的。あとは、全員に打撃投手をやらせる。肩が強くなりますし、投手目線で打者を見ることも勉強になる」と、一石二鳥だという。

 一昨年の冬には、ウエートトレーニングも廃止した。

「野球にはつながっていなかった。年間を通しての体幹トレーニングと、下半身は走り込みで鍛えています。あとは年に4、5回の栄養学の講習。強要はしませんが、自分たちで必要なものは分かっているはずです」

 2つの取り組みが成果として出たのが昨秋の県大会3回戦。最速150キロを誇るプロ注目右腕・田中法彦(3年)を攻略(3対1)し、自信を深めた。だからこそ、相手が柿木蓮(3年)、左腕・横川凱(3年)、根尾昂(3年)と好投手を擁する大阪桐蔭高でも臆するところはない。

 小島監督は、この日の打撃練習で選手を集めてこう言った。

「3投手を意識することはない。自分のスイングの形だけは崩さないでくれ」

 三重高も4人の3年生投手を擁する。日大三高との2回戦では主将・定本拓真が完封すると、乙訓高との2回戦では福田桃也が1失点完投。連戦の星稜高との準々決勝は打撃戦となったが、山本大雅、吉井洸輔、定本の継投で逃げ切っている。小島監督は準決勝の先発投手こそ明言しなかったものの、福田を温存できたことについて「連投、連投では難しかった。体を休ませられたのは非常に大きい」と、話した。いずれにしても継投を示唆しており「5点あたりでゲームは決まるかな? と。ウチとしては7、8点は取りたい」と、展望を語った。

 28歳の指揮官が貫く「ノビノビ野球」「イケイケ野球」。三重高としては、冬場から練習してきたことを発揮する最高の舞台、相手であり、気負いはまったくない。この挑戦者を大阪桐蔭高が受けて立つと、面白い展開が待っているはずだ。

文=岡本朋祐 写真=早浪章弘
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