第90回記念選抜高校野球大会が4月4日、いよいよ決勝戦を迎える。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられたが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。 一呼吸置くタイミングを逸したのか?
三重高・定本は163球の力投も報われず、49年ぶりの決勝進出を逃した
今大会から導入された「タイブレーク」。12回までで決着がつかなかった場合、13回からは無死一、二塁の継続打順でスタートする新ルールだ。
開幕から33試合、延長は5試合あったが、すべて10回で勝負は決していた。その33試合目となった準決勝第1試合。智弁和歌山高が東海大相模高を10回に振り切って(12対10)、18年ぶりの決勝進出。そして、準決勝第2試合ももつれた。三重高と大阪桐蔭高は相譲らず12回裏に入った。
三重高はこのイニングを抑えれば2対2のまま、史上初のタイブレークに突入する。ところが、一死から遊ゴロを一塁悪送球で出塁を許す。三重高の先発・
定本拓真(3年)は次打者を三振に斬って二死一塁。
この場面を悔やむのは、三重高・小島紳監督だ。
「二死一塁ですけど、打者は(四番)藤原(恭大、3年)君。一呼吸置いてもよかった……」
結果的に初球の真っすぐを左中間に運ばれ、一塁走者が一気に生還し、サヨナラ負けを喫している。あと一人。タイブレークを意識したのか?
「頭には入っていました。(13回表の)先頭打者は定本。強気で左の代打で行くか? 考えていました」
ベンチが先の展開をシミュレーションするのは当然である。ただ、そうした考えがあったから、目の前の勝負に集中できず、一呼吸置くタイミングを逸したのか? 小島監督に確認すると「それは、違います。総合的な判断として一呼吸取るべきだった」と否定した。
しかし、仮にタイブレーク制度がなければ、このピンチを脱することだけに注視できたかもしれない。こればかりは、ベンチにいた小島監督にしか分からない真相である。なお、指揮官は「さい配の面で経験のなさ。まだまだ勉強が足りない。ミスをカバーしてくれたのは選手」と、全体的な総括として、反省を口にしている。
一方、163球の力投が報われなかった主将・定本は冷静に振り返った。
「悪い球ではなかった。絶対に打ち取ろうと思って投げましたが、打った藤原選手のほうが上でした。すぐ切り替えて、夏は(大阪桐蔭高に)リベンジしてから優勝したい」
チームリーダーらしく、しっかり前を向いて話した。
決勝はタイブレーク制がなく、延長15回まで。引き分け再試合となった場合は、タイブレーク制が採用される。最後の35試合目まで、球児のドラマから一瞬たりとも目が離せない。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎