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【MLB】2年ぶり世界一へ向け「アートをゲームに復活させる」の思考へ

 

2年ぶりの世界一へ向け、カブスのマドン監督(中央)は刺激をチームに与える策をいろいろと思考錯誤し、実行している(両サイドは「ずーまだんけ」の2人)


 2月末のこと、カブスのメサのキャンプ地に日本のけん玉パフォーマンスコンビ「ずーまだんけ」が招待され、練習前のフィールドで、選手、コーチ、スタッフを前に、パフォーマンスを披露した。

 独特の衣装に身を包み、音楽に合わせて、踊りながらけん玉の技を次々に決めて見せる。大きな拍手と歓声に包まれた。「プロの選手に見てもらうのは初めての経験。緊張しましたけど、終わったあとに厚みのある拍手をもらってうれしいです。手が大きいんだろうな」と、ずーまだんけの2人。

 好奇心旺盛なジョー・マドン監督もやってみたいと挑戦。大皿はできたが、穴に刺すのはやはり難しく「不可能、こんなことができる人は世界中にそうはいない」と目を丸くしていた。ずーまだんけは今回、在ロサンゼルス日本国総領事館の企画で、アリゾナの日本祭りに呼ばれていた。

「日本の文化がすごく世界で注目されている。今回はアリゾナの日本祭りに来ていて、アジアでもヨーロッパでも日本フェスティバルみたいなのにしばしば呼んでもらっている」とのこと。領事館のスタッフがカブスの日本人スタッフと知り合いだった。そこからティム・バスコンディショニングコーチに打診、話が決まった。陽気なバスコーチは毎朝のミーティングを仕切っており、その日は約10分「ずーまだんけ」の時間を割いている。

「バレエだ。形式があって、敏捷性(びんしょうせい)があって、しなやかで、器用で。彼らが来てくれてうれしい」とお土産のけん玉を手渡されたマドン監督。「バシー(バスコーチのこと)がうまくやってくれた。チームの求めていたテーマに合う。キャンプで芸術的なことをやりたかった。これぞまさにアート」と感激の面持ちだった。  

 実はマドン監督の今年のテーマは「アートをゲームに復活させる」ことだった。タンパの芸術家ジェイソン・スケルドンが描いた風変わりな絵がクラブハウスのあちこちに飾られている。モナリザが白い打撃用グローブをして、金色のバットを握っている。リグレー・フィールドのマウンドにパンツをはいたダビデ像が立っている。サルバドール・ダリが審判のマスクをかぶっている――。

 監督の狙いは、新鮮な気持ちを取り戻すこと。カブスは2016年、ワールド・シリーズ第7戦でインディアンスを破り、世界一の座についた。その反動か17年は序盤につまずき、負け越しのままオールスターブレークに。後半なんとか盛り返しナ・リーグ優勝決定シリーズに進出したが、そこまでだった。

「ワールド・シリーズに勝って、難しいのは初めて挑戦するときの気持ちを再び取り戻すこと。初のワールド・シリーズでも、高校のガールフレンドでも良い。初めての感激を維持し、いかにポジティブで現在進行形のマインドを育んでいけるかだ」

 たまたまその日はマドン監督の新しいオリジナルTシャツをチーム全員に配った日で、文字は日本語で「マジ、しくじんなよ」だった。長い野球シーズン、個々がいかにモチベーションを高め、チームとしてまとまっていくにはどうすべきか。マドン監督は「ずーまだんけ」がもたらした新鮮な刺激にご満悦であった。
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