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センバツ現場発

センバツ現場発/智弁和歌山高吹奏楽部・岡村直樹部長が感じた『ジョックロック』のパワー

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

甲子園名門ブラバン対決となった決勝


智弁和歌山高の吹奏楽部・岡村部長は同小学校、同中学校と智弁一筋11年目である


 智弁和歌山高はチャンスになると、名物応援歌『ジョックロック』がエンドレスで流れる。テレビ、ラジオでも熱狂が伝わってくるが、甲子園の現場で聞くと思わず、鳥肌が立ってしまう。対戦相手としても、場内のムードに押され、最もやりづらいという。

 小学2年時、アルプス席で聞いた智弁和歌山高の生演奏に虜となったのが、吹奏楽部・岡村直樹部長(2年)である。智弁和歌山小、中、高と同校一筋11年目。父・英夫さんが高校の応援団だったこともあり、甲子園アルプス席は身近な存在だった。

 小学校には吹奏楽部がなく「早く入りたかった」と、中学に入学するとすぐさま同部の門をたたいた。金管楽器のユーフォニアムを担当し4年目。2年生10月の文化祭が引退時期となるため、4月から新2年生の岡村さんが部長を担っている。

 中、高合同の組織で活動しており総勢80人。年齢差があり、束ねる苦労が絶えないかと思えば「皆、しっかりしているので大丈夫です。逆に自分のほうが助らえています」と、頼もしい後輩たちを見つめた。

「ジョックロックの魔物ぶりには、恐ろしいものがあります」

 創成館高との準々決勝、東海大相模高との準決勝は壮絶な打撃戦を制した。野球部の粘りはもちろんのこと、球場のムードを作り上げた智弁和歌山高の吹奏楽部も大きな戦力だった。やはり『ジョックロック』のパワーは健在で、すさまじかった。球史に残る名勝負を終えた岡村部長も、帰宅した直後にはすぐ、バッタリと寝込んでしまったという。試合開始から終了まで演奏し続ける彼らも、相当なスタミナが必要なのだ。

 同じ近畿勢の大阪桐蔭高との決勝は、甲子園名門ブラバン対決でもあった。

「桐蔭とウチでは部員の素質、使用する楽器に至るまで、比べものになりません。でも、気持ちだけは負けないように全力で応援しました」

 3点を追う9回表。最後の演奏はやはり『ジョックロック』だった。力及ばず2対5。大阪桐蔭高の史上3校目の春連覇を阻むことはできなかった。しかし、最後の1球まであきらめずに吹き続けた。繰り返しになるが、驚異の粘りを見せた今大会。甲子園名物とも言われる、智弁和歌山高応援のパワーが改めて証明されるセンバツとなった。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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