セカンドキャリアを手助け
3月27日、愛媛県松山市で行われた四国リーグ開幕記者会見で、施策の一環として「キャリアデザインプロジェクト」を立ち上げることが発表されている。選手、OB、リーグ、球団、賛同受け入れ企業とキャリアデザインセンター(新設)が1つのチームとなって、アスリートの『トータルライフ(キャリア)』をデザインするものだ。
センターの代表は生山裕人氏が務める。香川で3年、ロッテで4年プレーした後、ウエディング・プランナーとして働いた経歴を持つ。
現役引退後の就職先の問題は、選手誰もが直面するものだ。生山氏自身も悩み、もがき苦しんだ経験がある。だからこそ「選手が気軽に相談できる“駆け込み寺”を作りたい」と話す。
「私自身、いろいろとかけがえのない経験をさせていただきました。それと同時にたくさんの挫折、失敗も重ねてきました。後輩たちに同じような失敗を重ねてほしくない。14年目を迎えるアイランドリーグが築き上げてきた財産を、現役選手に還元できるように動いていきたい」
2年もの間、多くの人たちに話を聞きながら、ようやくここまでたどり着いた。スクリーンに映し出されたプレゼン資料は、すべて自作したものだ。資料作成用ソフトを使うための解説書を買うところから始めた。
引退後のビジョンを考えることは簡単ではない。だが、決断のときは数カ月後にやって来る。
「考えておかないといけないし、いまやっていることが将来のために生きると思えば、取り組み方も変わってくるじゃないですか。僕が見て来た超一流になる選手と、社会に出てからキャリアを充実させる選手って、遠くはないなと思っています。僕はNPBに行けたから良かったけど、引き際をどう考えるかって、とても大事だと思う」
四国リーグから巣立ったOBたちを呼び寄せ「いま、こんなふうに頑張っている」という実体験を話してもらいたいと考えている。それは現役選手にとってヒントになるはずだ。
また、選手の特性をちゃんと理解してもらったうえで賛同し「一緒にアスリートの可能性を探っていこう」と言ってもらえる企業を募っていく。
「(学生は)就活を1年かけてやっているのに、選手は次の人生を1週間とか1カ月とかで決めるわけですよ。そんなのでいいのか? ましてや時期もズレてるから、ちょっとした劣等感も抱えるなかで中途半端に決めてしまって、働き始めたらいろんな不満が出てくる。それで転職を繰り返して……みたいなことが起こる。じゃあ、1年前から多少は考えていてもいいんじゃないか?」
現実から目を背けないための、きっかけを作る。次の人生の選択肢を増やしたい。リーグ全面協力の下、アスリートのキャリアをデザインしていく画期的なプロジェクトだ。
文=高田博史