今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『モタつく大毎と新球場の内幕』
今回は『1961年5月22日号』。定価は30円だ。『フラッシュ』に「プロ野球長者番付」があったので紹介しよう。いまのように推定金額ではない。2006年限りで廃止されたので、若い読者は知らないかもしれないが、かつては税務署が発表していた資料があったのだ。
1961年5月1日に発表された球界のベスト10は以下だ。
1位
金田正一(国鉄)2070万円
2位
堀本律雄(
巨人)1387万円
3位
三原脩(大洋)1165万円
4位
木次文夫(巨人)1030万円
5位
佐々木勲(巨人)1014万円
6位
黒木基康(大洋)981万円
7位
野口元三(巨人)974万円
8位
西山弘二(
広島)973万円
9位
井上善夫(西鉄)948万円
10位
杉町攻(西鉄)889万円
これは課税申告額であり、実収入では1位の金田は3000万円、2位の堀本が2000万円ほどらしい。巨人・
長嶋茂雄の名前もなく、無名の選手の名前が多い。
金田、三原以外、実はすべて新人選手なのだ。当時入団時の契約金がいかに高騰していたかが分かるだろう。さらにいえば、金田も10年選手のボーナス、三原は大洋への移籍料が上乗せされていた。基本年俸だけで考えれば、金田で2000万円程度、ほかはトップ選手でも1000万円には行っていないという感じか。
物価の定義、比較は難しいが、いまの10分の1ほどと考えれば、なんとなく、なるほどと思える額だ。
『
モタつく大毎と新球場の内幕』では、大毎の永田雅一オーナーが言い続けている新球場についてだ。候補地は3つに絞られたようだが、土地買収が片付いていないらしい。いまは深川にある東京ガスグラウンドが最有力候補らしい。本業・大映の映画産業は苦戦しているようだが、この人の攻めの姿勢は変わらない。
5月上旬、セの首位に立っていたのが、国鉄。その中で打率のリーグトップに立っているのが、二塁手の
土屋正孝だった。『国鉄旋風の眼、土屋正孝』という記事もあったが、
川上哲治監督との確執もあって巨人を追われた移籍1年目の男だ。守備面では、他の内野手に指示を出すリーダーシップも目立った。
ただ、聞くと、
「僕の場合は巨人でも変わらなかったよ。(三塁の)長嶋や王(貞治。一塁)、広岡(達朗。遊撃)などファイトマンがいたけど、結局守備を深くしろ浅くしろの指示は、僕が言ってたけどな。王や長嶋のほうが名声があるので、僕が目立たなかっただけだよ」
プライドが高い選手だったようだ。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM