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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

ロッテ・中村奨吾、真の覚醒の時――

 

三番・中村が2018年のカモメ打線をけん引している


「いかがですか、逆に」

 この言葉をどうとらえればよいのだろう。2018年版カモメ打線の三番を任される中村奨吾だ。

 3月30日、ZOZOマリンでの楽天との開幕戦。ロッテのスターティングオーダーでファンの目を引いたのは「二番・遊撃、藤岡裕大」「六番・左翼、菅野剛士」という2人のルーキーだった。なにせチームにとって新人2人が開幕スタメンに名を連ねるのは1997年の小坂誠清水将海以来、21年ぶりだったからだ。

 まさに大抜てき――。しかし、大抜てきはその2人だけだったのだろうか。「三番・二塁、中村奨吾」がコールされたのは当たり前のことだったのだろうか。

 オープン戦ではどっかりと三番に座り、14試合で打率.292、1本塁打、8打点、2盗塁。昨季、貧打に泣いてシーズン球団ワーストの87敗を喫し、最下位に沈んだチームのクリーンアップを担うには申し分ない成績だ。そのまま開幕三番に指名されても何の不思議もない。

 だが、中村がいまだシーズンを通して一軍で結果を残し続けたことがないのは事実だ。飛躍を期した3年目の昨季も苦しんだ。開幕から極度の打撃不振に陥り、前半戦はほとんどを二軍で過ごすことになった。

 そんな男が当たり前のように三番に座り、開幕9試合とはいえ打率.342、1本塁打、6打点、3盗塁という当たり前以上の数字を残している。

 早大時代から思い切りのよいバッティングには定評があった。しかし、プロ入りからの2年間はそれがいい方向に転ばず、自身も「思い切りのよさと無茶振りは紙一重」と自覚していた。

 本格覚醒の兆しが現れたのは昨季、6月に再昇格してからだった。7月は20試合で打率.317。8月は25試合で打率.276、3本塁打。「吹っ切れたというか、割り切って自分の思っているバッティングをしようと試合に入れたのがよかった」。

「ゆっくりタイミングを取って、強く振りにいく」。中村にとっての「自分が思っているバッティング」の現時点での答えだ。「バッターにとっての基本」だと分かっていながら実践することのできなかった“タイミング”について、自分なりの方向性を見つけつつある。そうすることで、投手との駆け引きの中で自分のタイミングにもっていける確率が少しずつ上昇していった。

 才は確かだ。現役時代、誰よりも“トリプルスリー”の称号を追い求め、達することができなかった井口資仁新監督が、「トリプルスリーに最も近い男」と評するのだから。事実、中村自身も「自分に求められているものは打つだけじゃないと思うので。塁に出て、走って、相手にプレッシャーをかけるっていうことも自分の役割だと思うので」と自覚は十分だ。

「クリーンアップ、三番という新たな役割はいかがですか――」

 その答えが冒頭の言葉だ。自信があるゆえにこちらを茶化したのか、結果が出ているがゆえの照れ隠しか。少なくとも、確かな手応えを感じていることは間違いないだろう。そして、「やりがいはありますね」と言葉を続けた。

 中村奨吾にとっての2018年、もうひとつの重要なキーワードが“二塁コンバート”であるはずなのだが、それがどう今に影響しているのかは聞けていない。中村は真の覚醒の時を迎えた――。それが見えたとき、あらためて聞いてみたいと思う。

文=杉浦多夢 写真=高塩 隆
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