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160キロも……中日・鈴木博志が秘める速球王の資質

 

中日のセットアッパーを務める鈴木博


 投じる1球1球が楽しみになっている。

 今季、ドラフト1位で中日に加わった鈴木博志。ルーキーながら開幕一軍入りしただけでなく、セットアッパーに抜てきされ、4月11日現在で開幕から5試合連続無失点と好投している。

 鈴木博の自慢の武器は、最速157キロを計測したこともある力強いストレート。球速は常時150キロを超え、プロ初登板となった4月1日の広島戦(マツダ広島)では155キロをマーク。豪快なボールがミットに吸い込まれるたびに、球団初の160キロを達成したのではないかと、視線は思わず電光掲示板へ向かってしまう。技巧派投手が多いチームの中で、剛腕リリーバーは異彩を放っている。

 だが、高まる周囲の期待とは対照的に、鈴木博本人はいたって冷静だ。

「球速は特に気にしていません。一番大切なのはチームが勝つことなので」

 掛川市立大浜中では、直球よりも変化球を得意としていた鈴木博。スピードがどんどんと上がっていった磐田東高時には球速を追い求めることもあったというが、社会人・ヤマハに入社して意識に変化が。仕事として賃金を得ながらプレーすることで、チームの勝利への責任感がさらに増したと語る。

 プロでも直球を狙う相手打者にカットボールを投じて少ない球数で打たせて取ることも。5日の巨人戦(ナゴヤドーム)ではわずか5球で三者凡退に仕留めてみせた。剛と柔を使い分け、より手ごわい投手へと進化を続けているのだ。

 160キロを出すためにプレーすることはない。それでもいつか……と思わずにはいられないのは、こう口にしているからだ。

「まだ春先ですし、気温が高くなればもっと腕を振れるようになると思っています。これまで、球速が上がるときはまず平均球速が速くなり、そこから一気に2、3キロ、ドンといくことが多い。今、徐々に平均球速が上がっているんです」

 その言葉どおりならば、現在は飛躍のためのバネに足をかけている真っただ中。まだプロ1年目の右腕が秘めるポテンシャルは果てしない。

文=吉見淳司 写真=BBM
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