昨季は開幕から快進撃を見せた楽天だが、今季のスタートダッシュは失敗に終わっている。レギュラーメンバーを見るとほとんど変化はないのだが、打線がつながらず得点へと結びつかない。
だがその中で、全試合に出場し、攻守で活躍を見せているのが島内宏明だ。開幕は三番としてスタメン出場も、4戦目からは主に、リードオフマンとしてチームをけん引している。昨季は打撃を中心に存在感を示していたが、今季はそこに足も加わった。
昨オフから楽天は走塁を強化しており、特に島内や
茂木栄五郎は今季、積極的に次塁を狙う姿勢を見せている。昨年わずか3盗塁だった島内はすでに2盗塁をマーク。得点数もチームトップタイの6だ(4月12日現在)。4月3日のホーム開幕の
日本ハム戦では初回から走るなど、その積極性は数字にも姿勢にも表れている。
「前の塁にいれば、それだけ得点につながる」と意識をより高く持ち、「(盗塁は)最低でも10試合に1つ」と例年よりも目標の数字を引き上げ、明確に定めた。
「これまで以上に走塁の意識は高くなった」と話す島内が特に意識しているのが、“周辺視野”だ。
清水雅治コーチからその重要性を説かれ、視野が狭くならないように意識しているという。
「どこか1点に集中しすぎるよりも、全体的に見ていたほうが動きがスムーズになる」と清水コーチ。盗塁を狙う際にも、投手の些細な動きの変化に反応できるよう、選手たちは日々トレーニングを重ねているが、「周辺視野を意識することは走塁、盗塁に限らず打撃、守備とすべてにつながる」と続けた。
昨季、全試合に出場したことで自覚が芽生えたのだろう。「思った以上に積極的だね」と清水コーチは島内の成長に目を細める。オフから磨いてきた走塁技術と持ち前の俊足を生かし、果敢にホームを狙う背番号35の存在は、相手チームにとって脅威となるはずだ。
「去年よりも自信を持って走れています」と話す島内の足に注目してみると、昨年までとは違った姿が見えてくるだろう。
文=阿部ちはる 写真=BBM