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自己最速149キロをマーク!“世代NO.1”横浜高の2年生左腕・及川雅貴

 

「秋のこともあるので、常に平常心でいる」


横浜高の2年生左腕・及川は神奈川県大会4回戦(対横浜創学館高)で自己最速を6キロ更新する149キロを計測した


 場内の空気を変えた。4月15日、横浜創学館高との神奈川県大会4回戦。背番号22を着けた横浜高・及川(およかわ)雅貴(2年)が救援マウンドに上がった。今年、サーティーフォー保土ヶ谷球場のスコアボードは改修され、スピードガン表示が新たに設置。投球練習にもかかわらず「146キロ」を計測すると、スタンドがざわついたのである。

 何かやってくれそうな予感。そして、ファンの期待にこたえるのだから大物だ。

 先頭打者の初球に147キロで空振りを奪うと、2球目も148キロで空振り。146キロのボールを1球挟んで、144キロで空振り三振。そして、次打者の二ゴロを打ち取ったボールは、この日最速の149キロ。ファンは「9?」と、思わず興奮気味の声を上げている。昨秋までの最速が143キロだから、一冬で6キロ更新したのだ。

 ネット裏で視察したあるNPBスカウトも「左であれだけ投げられるのはそういない。来年は(スカウティング争奪戦は)大変なことになりますよ」と色めきだった。

 及川は中学時代(匝瑳シニア)に侍ジャパンU-15代表のエースとして2016年8月の「第3回WBSCワールドカップ」(福島県いわき市)で、準優勝に導いたサウスポーだ。「世代NO.1」の呼び声が高く、横浜高では1年生ながら昨夏の甲子園でもベンチ入り。

 さらなる飛躍が期待されたが……。昨秋の県大会準々決勝では先発を任されたものの、制球難で試合を作ることができず、チームも8対15の8回コールド敗退を喫している。

「自分のせいで負けた」

 以降、投手担当の金子雅部長と二人三脚で出直しを図った。平田徹監督は「ほぼ1日も休んでいない。チーム全体がオフの月曜日も2人で練習していましたから」。コントロールを上げるために、下半身強化に着手。一冬を越えて、ストレートの質が上がり、変化球でもストライクを取れるようになったが、3月の練習試合解禁以降は結果が伴わなかった。県大会の背番号は昨秋の「10」から「22」に降格する形となり、今大会初登板は「良い投球をしないと」と、発奮材料がそろっていたのである。打者7人から4奪三振で、一人の走者も許さなかった。

 自己最速149キロにも「全力で投げた結果です。150キロを目指したいところではありますが、自分はまだ、コントロールが課題なので、スピードは意識しない」と、あまり興味を示さない。「秋のこともあるので、常に平常心でいる。周りのことは気にしないようにしている」と、2年生とは思えない落ち着きだ。

 7回途中からは1年生左腕・松本隆之介が及川をリリーフし、横浜高は9対0の7回コールド勝ち。公式戦デビュー戦で松本は最速145キロを計測。及川は「ライバルが増えるのは良いこと。チーム全体も成長できる」と前向きにとらえる。平田監督はエース左腕・板川佳矢(3年)、右腕・黒須大誠(2年)に加えて、及川を加えた「3本の矢で何とかできれば……」と夏への展望を語る。

 昨秋の県大会準々決勝敗退からの巻き返しを誓う横浜高は、南神奈川大会の第1シードを獲得。及川について「復活のノロシは上げられたかな」を喜びつつも「まだまだ、個人としては『借金』が多いので、これからちょっとずつ、返してくれればいいかな」と、独特な言い回しで奮起を促していた。

 横浜高は22日の準々決勝(保土ヶ谷)では、湘南学院高と対戦する。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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