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中村紀洋コラム

中村紀洋の打撃理論で浜松開誠館高が本塁打量産 「空振り、フライアウトはOK。フルスイングしなさい」

 

体が小さな子どもにも


フルスイングを貫いた現役時代の中村紀洋氏(2001年近鉄時代)


 中村紀洋です。連載企画2回目の今回は打撃理論についてつづらせていただきます。

 昨年4月から浜松開誠館高の非常勤コーチとして指導に携わっています。大きな可能性を秘めた高校生たちを教えるのは本当に楽しいです。1カ月に1度の頻度で数日間指導するのですが、見違えるように成長する選手を見ると自分のことのようにうれしく感じます。

 指導で心掛けているのは「バットを振ること、フルスイングすること」です。もったいないと感じるのは、体の小さな子が当てにいくような打撃をすることです。親御さんや中学までの指導者に「ホームランバッターじゃないんだから目いっぱい振るな」と言われていたからでしょう。僕はまったく逆の指導法です。体の小さな子どもでもフルスイングさせます。

 小柄でもプロ野球でホームランバッターになった選手はたくさんいる。本塁打はコツをつかめば誰でも打てる可能性があるのです。僕も子どものときは体が大きくありませんでしたが、目いっぱい振っていました。

 もちろんチーム打撃は重要です。試合の状況に応じてゴロを打つことを求められる局面もあります。ただそのような小細工は後から教えられることだと考えています。目いっぱい振る力がなければ子どもたちの潜在能力を眠らせたままになります。当てにいく打撃では、守っている相手も怖さを感じません。極端に言えば、子どものときはホームランの打ち損ないがヒットの感覚でも良いのではないでしょうか。

 浜松開誠館高で指導する際も「空振りしてもいい。フライアウトでもいい。目いっぱい振りなさい」と子どもたちに伝えました。もちろん最初は戸惑いがあったと思います。ただ打球を遠くに飛ばすと子どもたちが笑顔になります。フライだけを打つ練習もさせました。僕が注意するのは当てにいく打撃をすること。練習で3球三振でもOK。「今のスイングはこうなっているから」と空振りした原因は話し合いますが。結果については問題ありません。

 先日、同校の佐野心監督から「スイングの鋭さが今までと全然違う。ノリさんがコーチにきてから1年間でチームの総本塁打数が30本増えた」と連絡が来ました。甲子園という大きな目標に向け、勝つことがもちろん大事です。そのための指導もこれから力を入れなければいけません。でもせっかく好きで始めた野球です。1人でも多くの子どもたちに思いっきり野球を楽しんでほしいですね。

●中村紀洋(なかむら・のりひろ)
渋谷高で2年夏の90年に「四番・投手」で激戦区の大阪府予選を勝ち抜き、同校初の甲子園出場に導く。高校通算35本塁打。92年にドラフト4位で近鉄バファローズに入団し、「いてまえ打線」の四番として活躍した。2000年に39本塁打、110打点で本塁打王、打点王を獲得。01年も132打点で2年連続打点王に輝き、チームを12年ぶりのリーグ優勝に導く。04年に日本代表でシドニー五輪に出場して銅メダルを獲得。メジャー・リーグ挑戦を経て06年に日本球界復帰し、07年に中日で日本シリーズMVPを受賞した。13年にDeNAで通算2000安打を達成。15年に一般社団法人「N’s method」を設立し、独自のMethodで子ども達への野球指導、他種目アスリートを中心にトレーニング指導を行っている。17年には静岡・浜松開誠館高校で硬式野球部の非常勤コーチに就任。高校生の指導に力を注ぐ。

記事提供=ココカラネクスト編集部 平尾類
ココカラネクスト編集部
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