今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『カケ屋につぶされた? 近鉄』
今回は『1961年10月9日増大号』。定価は10円上がって40円だ。セは巨人、パでは東映が優勝にひた走っている。巨人ラストスパートの投手の原動力は、何度も登場しているが、途中入団の
村瀬広基。3連続完投勝利中だ。
一方、打では9月に入り調子を落としていた長嶋茂雄が上がってきた。
『ホームランは30本、打点は90…』という記事では、不振時のフォームについて、記者と以下のようなやり取りをしている。
「多少はくずれますね。左脚が外へ流れそうになるのです」
「それはアウトステップ気味になるということですか」
「いやそうじゃない。大体スタンスのとき、もっとも理想的なのはヒザがX字のラインを描くようになるのです。それがいまはO字のラインのようにヒザが外に流れているのです」
「そうなるとどのようになるのですか」
「X字のラインで打つと、ポイントが金玉の上にくるのです。これが理想ですね。それがO字だと前にポイントが出る。前に出ると苦しいから、どうしても顔が上がる。
4年間もやると、こうした悪い結果もよく知っているのですが、なかなか直そうとしても直らない。相手もあることだし、直らないところに、野球の持つ面白さがあるのです」
パの東映の大川博オーナーは、
水原茂監督を全面的に信頼し「金は出すが口を出さない」という言葉が有名になっていた。
「どうもあまりに有名になってしまったが、自分の信頼して連れてきた人には一切まかせんといかん。もちろん、まかせられる人でないといかんが、なんでもそうだが、責任を持たせることが大切で、それにかれこれいうと、どこに責任があるのか分からなくなる。チームの運営で難しい面だね。監督は技術者だし、僕が経営者だからね」
『カケ屋につぶされた? 近鉄』という物騒な記事もあった。前提として関西でプロ野球、高校野球のカケが行われていたのは、公然の事実だった。近鉄絡みのカケで大勝した人が経営する飲み屋の常連に、近鉄の選手がいたことから立ったウワサらしいが、結論は悲しい。
「近鉄に果たして八百長ができるかということだ。八百長というのは強いほう、すなわち試合前に勝利を予想されるほうが負けてこそ成り立つものだ。近鉄のチーム力からみて、まず勝ちと予測されるゲームなんてないのではないか」
同年の近鉄は、36勝103敗で最下位。首位とは51.5ゲーム差だった。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM