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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

DeNAブルペンを支えるマルチロール右腕

 

開幕直前に中継ぎに転向し、獅子奮迅の働きを見せる井納。ラミレス監督の決断が功を奏している


「過去3年間の数字はウソをつかない。彼には1イニングをきっちり投げてもらったほうがチームの勝利に貢献できる」(ラミレス監督)

 2015年=5勝8敗、防御率3.27、16年=7勝11敗、防御率3.50、17年=6勝10敗、防御率3.84。昨季まで先発ローテで投げてきた井納翔一の成績だ。立ち上がりはスムーズなほうで、試合中盤まで「0」を並べる。しかし、相手打線が2回り目、3回り目となる中盤以降につかまり失点を許し、勝ち切れない──。井納には、そんな印象が付きまとう。

 開幕前直前、ラミレス監督は井納の特性を考慮したうえで中継ぎへの配置転換を命じた。今永昇太ウィーランドら先発陣がそろって戦線を離脱する時期に、先発ローテの一角を中継ぎに回すことは大きな決断だったに違いなかったが、今のところこの判断は吉と出ている。

 4月28日の中日戦(ナゴヤドーム)、同点の7回にマウンドに上がると一死から二塁打を浴びるが、後続を二直併殺で切り抜けると味方の逆転を呼び、今季2勝目が舞い込んだ。「チームが勝つために投げること。7回を一番点を取られないイニングにしたい」と語る井納は、10試合で救援失敗なし。2勝0敗5ホールド1セーブ、防御率2.79と勝ちパターンの一角で躍動する。

 同じように中継ぎで安定した投球を見せているのが三嶋一輝だ。もともとは先発を担ってきたが、昨季は1試合に先発したのみで中継ぎに回っている。転換点となったのが広島とのCSファイナルステージ第5戦(10月24日、マツダ広島)だった。勝てば日本シリーズ進出という大事な試合で、初回に失点した先発の石田健大に代わり、2回から2イニングを無失点に抑え、傾きかけた流れを広島に渡さなかった。「昨季のCSではいいところで投げさせてもらい、勉強になりました。先発、中継ぎどこでもいきます」とあらゆる展開でマウンドに上がり、今季は8試合で2勝0敗、防御率1.84という安定感だ。

 5年目の平田真吾の存在感も光る。4月11日の巨人戦(東京ドーム)ではプロ初先発に抜てき。惜しくも初白星は手にできなかったものの、5回無失点と好投を演じるなど、ブルペンを支えている(5試合、防御率3.38)。

 試合の展開に左右されずにロングリリーフできる中継ぎは、貴重な存在。3人は先発が序盤で崩れたときには、“第2先発”的なポジションで試合を立て直すこともできる。井納のみならず、三嶋、平田も勝ちパターンを担うだけの力もあり、状況によっては先発さえもこなす。

 開幕から約1カ月が経過し、阪神に次ぐ12球団2位の防御率3.35という数字を残すDeNA投手陣(5月2日時点)。その裏には、“マルチロール右腕トリオ”の踏ん張りがある。

文=滝川和臣 写真=高塩隆
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