優勝するためには、そこが十分に機能していなければいけない。チームの司令塔である捕手。扇の要を務め、グラウンド上での監督的存在でもある。勝利へ必要不可欠な存在であるセ・リーグ6球団の捕手事情を見ていこう。 読売ジャイアンツ
開幕前は大本命の小林誠司に複数人の候補が追いかける正捕手争いが繰り広げられていたのだが、フタを開けてみれば経験値と守備力で他の候補を二回り上回っていた小林がほぼ不動の存在に。「打撃面に難あり」とされていたが、一時はセの打撃ランキングで首位に立つなど5月6日終了時点で打率.321と好調打線を支える1人になっているからだ。デビュー直後の
阿部慎之助を彷彿させる思い切りの良い打撃を見せる、新人の
大城卓三が先発で4試合起用されており、小林以降の育成および2番手の強化も着々と進んでいる。
横浜DeNAベイスターズ
嶺井博希、
戸柱恭孝、
高城俊人の3人を併用するのは変わらないが、今季は、嶺井がスタメンマスクをかぶる機会が増えている(27試合中20試合)。戸柱の打撃の調子が上向かないのが要因の一つだ(戸柱:打率.133、0本塁打2打点、嶺井:打率.222、2本塁打9打点)。高城は2年目左腕・
濱口遥大が先発のときにマスクをかぶることが多い。このように3捕手を使い分けるのは、同じ投手でもそれぞれのリードにおける“色”を出させることで、相手打線に的を絞らせないという狙いもある。
広島カープ
地元・広島出身の強肩強打のルーキー・
中村奨成、攻守走そろい成長著しい2年目の
坂倉将吾と期待の若手が注目を集めているが、彼らが一軍で出場機会を勝ち取るには高い壁を越えなければならない。経験豊かで投手の力を最大限に引き出すプロ17年目の
石原慶幸。12年目の會澤翼は勝負強い打撃も魅力で選手会長として高いリーダーシップも発揮している。また、現在は二軍調整中だが、
岡田明丈や
大瀬良大地らとバッテリーを組み存在感を増す
磯村嘉孝もいる。向こう10年は安泰と言われる捕手陣だが、その分競争は12球団屈指の厳しさだ。
阪神タイガース
開幕から強肩で守備力の高い
梅野隆太郎が正捕手のポジションを与えられていた。それも今季から打撃フォームを改造し、打撃力をアップしたことでの期待感も高かったからだ。しかし、4月下旬になっても打率が1割台と低迷し続けたこともあり、打撃のいい原口文仁がスタメンマスクをかぶることが増えてきた。どちらも配球面が課題であるため、決め手がなく、今後は2人の併用が続いていくことが考えられる。
東京ヤクルトスワローズ
今季は中村悠平がスタメンマスクをかぶる機会が多いが、投手陣は苦しんでいる。故障者もいて苦しい状況ではあるが、選手会長が何とか再建を進めたい。昨季まで中村と正捕手争いを演じていた第2捕手の
西田明央は、ここまで一軍出場なし。その穴をベテランの
井野卓が埋める形だったが、育成から昇格したばかりの
大村孟、社会人出身のルーキー・
松本直樹、高卒2年目の
古賀優大が次々と一軍デビューを果たしており、若い力の台頭が期待されている。
中日ドラゴンズ
今季より
日本ハムからFA移籍の大野奨太と
松井雅人を併用している。大野奨は頭部死球の影響で一時離脱したものの、大事には至らず、チーム最多の17試合で先発マスク。特に
松坂大輔が先発した3試合は、全て大野奨とのバッテリーだ。ただし、盗塁を刺したのは5月6日時点でわずかに1と、盗塁阻止率が1割を切っている。一方、松井雅の盗塁阻止率は3割近い。ただし、松井雅は打撃不振でこちらは打率が1割を切っている。
木下拓哉が第3の男で先発マスクをかぶることもあるが、インパクトは薄く、正捕手問題解決にはまだまだ時間がかかりそうだ。
写真=BBM