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スカウト注目!大先輩へ良い報告をするためにも「全国制覇」を狙う倉敷商高・引地秀一郎

 

「夏には最低でも155キロ」


倉敷商高の187センチ右腕・引地はシート打撃でこの日の最速144キロを連発。151キロ右腕は夏へ向けて調子を上げてきている


 1971年から使用している倉敷商高の専用グラウンドに、甲高い女子マネジャーの声が響いた。

「144キロです!!」

 ネット裏でスピードガンを構え、梶山和洋部長の指導により、捕手が投手へ返球する絶妙のタイミングでコール。同時に、球数もカウントしている。この日、シート打撃に登板した引地秀一郎(3年)は真っすぐ中心の配球で3イニングを投げ、ストレート31球中23球(全41球)が140キロ超えとなった。この日の最速144キロも連発している。

「仲間だから当てられないので……」とやや遠慮がちながらも、この日のテーマだった対左打者の内角の厳しいコースに決まっていた。187センチの長身から繰り出されるため、対戦した中江悠太主将(3年)も「迫力がある。ほかの投手よりも近く感じる」と、成長を確認した。

「いつも練習では142キロが出ればやっとなので、今日はアベレージで140キロをオーバーしていたのは収穫。もっと暖かくなれば、スピードも上がると思います」

 昨年夏の岡山大会3回戦(対関西高)で、自己最速の151キロをマーク。一躍「ドラフト候補」として、脚光を浴びる存在となった。同秋には中国大会に出場し、NPBの各球団スカウトの評価もうなぎ上り。だか、同大会1回戦敗退から1週間後、引地にアクシデントが襲う。

 打撃センスにも定評があり、練習試合で出場した左翼守備で、フェンスに激突すると、左足のひ骨と頸骨を骨折した。3カ月の入院と、退院後も1カ月半にわたり、松葉杖を手放せなかった。

 まだ、全体練習にも加われない今年1月、倉敷商高の大先輩・星野仙一氏の悲しい訃報が入った。「倉商の名を全国に広めた方。夏には必ず、良い報告をしたい」。以降、体幹トレーニング、自転車こぎにもより一層、気合が入った。指先の感覚を鈍らせないため、座りながら、近距離でのキャッチボールを継続。2年春からエースとして酷使してきた肩、ヒジを休ませるには好都合の時間でもあった。

 3月中には戦線復帰。地道な強化の成果により、「明らかに昨年秋よりも制球が上がったと思います」と、手応え十分。最後の夏は、自身初の甲子園出場へ導いた上で、好きな言葉でもある「全国制覇」を、貪欲に狙っていくという。

 夏の甲子園で、公立校が深紅の大優勝旗を手にしたのは、07年の佐賀北高が最後。引地は中学時代から軟式球で最速137キロを投げ込み、県内の強豪私学による争奪戦となった。

 しかし、引地は「熱い方」と、闘将・星野先輩に匹敵する熱血漢の倉敷商高・森光淳郎監督に惹かれ、迷わず同校に進学。また、「最近の甲子園を見ていても、勝ち上がっているのは、私立ばかり。県立もできるんだ! という意地を見せたい」と、その言葉にも、力が入る。

「夏には最低でも155キロ。大谷翔平さんが高校時代に160キロを投げているので、そこも目指したい。負けず嫌いなので……。もちろん、チームの勝利が最優先です」

 高校卒業後の希望進路は「プロ」。フォームの参考にしてきた巨人上原浩治、伝説のメジャー投手、ノーラン・ライアンのように、キレのある真っすぐで「打者を圧倒する」スタイルが理想だ。

 倉敷商高は今春の県大会を3年ぶりに制した。8強進出校の中で、公立校は倉敷商高のみ。貫いた伝統の「執念」が実を結んだという。

 6月2日に開幕の中国大会(山口)へ出場する。引地を目当てに、多くのNPBスカウトの視察が予想される。「公式戦は自然と力が出る」。夏本番を前に、存在感を見せつけるつもりだ。

文=岡本朋祐 写真=宮原和也

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