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プロ野球仰天伝説

タッチの音を口で出し、空タッチでアウトにした苅田久徳/プロ野球仰天伝説144

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

タッチが間に合わないと思うと……


東京セネタース・苅田久徳


 飛燕、名人。

 苅田久徳(東京セネタースほか)のセカンド守備には、さまざまな形容がされてきた。捕球は堅実かつ華麗。独特のカンで1球ごとにポジショニングを変え、正確なスローイング、鮮やかなジャンピングスローでも魅せる。戦前、二遊間のコンビネーションなど、だれも言わなかった時代、遊撃手の後輩・中村信一とアイコンタクトでの併殺プレーを徹底的に磨いた。

 トリッキーな動きも多く、三塁走者を目でけん制しながら、二塁、一塁へ顔も向けずに投げることもあった。そして究極のトリックプレーが“タッチ音”だ。

 明らかにタッチが間に合わないと思うと、タッチするタイミングでヒザを走者に当て、音は口か、あるいは自分のユニフォームをサッとこすって、似た音を出す。

「昔のアンパイアはいいヤツばかりだから、みんなよくだまされてくれたよ。それとも、こっちがずるいのかな」

 そう言って、名人苅田はニヤリとした。

写真=BBM
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