今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 森永勝治、広島初の首位打者に
今回は『1962年10月22日号』。定価は40円だ。
10月3日、シーズン最終戦となる甲子園での
広島戦に勝利し、
阪神が優勝。藤本定義監督の涙の胴上げ、優勝インタビューの写真が掲載されているが、グラウンドは人、人、人……。
優勝決定と同時にグラウンドに観客がなだれ込んだようだ。警備員や記者たちは随分殴られたらしい。
物議を醸したのが、MVP。記者投票で決定するのだが、阪神・
村山実に輝いた。25勝14敗、防御率1.20と、まったく問題ない数字ではあるのだが、同じ阪神に27勝11敗、防御率1.66、セ・リーグ記録の13完封を達成し、V決定試合でも完封で胴上げ投手になった
小山正明がいた。
村山も「僕は小山さんと思っていたんですが」と困惑する受賞だった。
投票の締め切りが優勝決定の3日で、最後の完封を反映できなかったため、とも書いてあったが、ならば優勝がどこに決まるか確定する前の締め切りだっだのか。それもどうか。
小山はこの知らせを聞き、祝勝会にも出ずに帰ってしまったが、7日から再開した練習では元気な顔を見せ、
「ここまで来たんだから村山と力を合わせて日本シリーズもいただかないとね」
と内心は分からぬが、ひとまず笑顔で語っていたようだ。
この年、広島からは県民の期待に応えて念願の首位打者が誕生。打率.307の
森永勝治だ。これは2リーグ制後の首位打者では最低打率でもある。
この時点では、まだ1試合を残していたが、「もうここまできたら大丈夫でしょう。去年(61年)ベストナインに選ばれたときもうれしかったが、首位打者は打者の最高の名誉だからうれしい。3割ちょっとでなれたんだからついていたんだが」。
常に控えめな森永だが、初の栄冠にはさすがにうれしそう。顔をほころばせて語る。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM