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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

1500試合連続“担当”を目前とするレジェンドの最終電車との戦い

 

6月1日のZOZOマリンでの広島戦で主催試合1500試合連続担当を達成する谷保恵美・場内アナウンサー



 5月25日、ロッテの広報メールが届く。件名は「場内アナウンス担当連続試合の件」。“マリンの声”として野球ファンにはおなじみの場内アナウンサー・谷保恵美さんが、6月1日のZOZOマリンでの広島戦で主催試合1500試合連続担当を達成することを知らせるものだった。

 ロッテ球団を通じて出された谷保さんのコメントの一部をお伝えしよう。「入社2年目から場内アナウンスの仕事をさせていただき今年で28シーズン目となります。高熱の日、頭痛の日、歯痛の日、失恋の日、家族、友人の冠婚葬祭、電車が止まった日……。いろいろありましたが、ZOZOマリンスタジアムのアナウンス席を空けることなく、担当できて本当に良かったです」。

 そのコメントを読み、こう思った。「そうか、谷保さんにとっては電車が止まるのは一大事なんだ」、そして「谷保さん、昨日は電車で帰れたかな――」。

 谷保さんにとって主催試合1499試合連続担当となった5月24日のZOZOマリンでの日本ハム戦は手に汗握るシーソーゲームとなった。9回裏の土壇場で追いつき、11回裏にまたまた追いつき、12回裏の二死から劇的なサヨナラ勝ち。試合開始の18時15分からは4時間41分が経過していた。

 通常、谷保さんのマリンでの1日の仕事収めは臨時バスの最終時間の告知だ。しかし、たいていの場合は自らがその最終バスに乗れることはない。最寄の海浜幕張駅まで歩き、電車で帰る。最終電車は24時13分。最悪でもそこには間に合うように仕事を急ぐ。

 しかし、ZOZOマリンで行われた楽天との開幕戦は、とてもではないが最終電車には間に合わなかった。延長12回、5時間ジャストの死闘。試合終了時に時計はすでに23時33分を指していた。谷保さんは「(ファンの)皆さんといっしょに、駅でタクシーの列に並びました」と笑って振り返っていた。

 そんな小さな苦労の連続を笑顔で乗り越えながら、1500試合連続担当という大きな通過点を迎える谷保さん。そんな記念の試合でも、いつもと変わらぬ伸びやかな声をマリンの空に響かせてくれるはずだ。

文=杉浦多夢 写真=井出秀人
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