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なぜ交流戦でパが強いのか?

 

再編問題から実現


2005年、バレンタイン監督率いるロッテが交流戦初代王者となった


 まず、昔話から。
 1950年代後半から開き始めたセ、パの人気格差は90年代後半まで続く慢性的な現象となった。セ球団と比べ観客動員が大きく下回っていたパは、何度か球団統廃合が行われ、89年までに近鉄以外の全球団の親会社が一度ないし、数度変わっている(統廃合ではセは松竹が大洋に合併されて消え、洋松ロビンスとなり、その後、大洋に戻る。身売りはその大洋と国鉄が経験)。

 セの人気は、ほぼ全試合を全国ネットの地上波でテレビ放映していた巨人に支えられる部分が大きかった。この間、パ球団は「ドル箱巨人戦」を手に入れるため、交流戦の提案、さらに水面下で1リーグ制への動きを画策したこともあった。

 ただ、1リーグにしろ、交流戦にしろ、パの「巨人戦をする」は、セからすれば「巨人戦が減る」ということだ。観客動員だけでなく、莫大なテレビ放映権料収入も減り、死活問題となりかねない。逆に、だからこそ巨人は江川問題の際、「リーグ脱退」をちらつかせ、他チームを従わせようとした、ともいえる。

 状況が一気に動いたのが、2004年、近鉄とオリックスとの合併による1リーグ制への動き、つまり「球界再編問題」だった。結果的に楽天誕生で2リーグ制は守られ、どのようなやり取りがあったのかはわからぬが、同年秋に翌05年からの交流戦開催がすんなり決定した。

初年度を沸かせたロッテ


 初年度は、1チーム36試合で5月6日にスタート。当時パのみだった予告先発は取り入れられず、日本シリーズ同様、パの主催ゲームのみDH制が採用されることになった。交流戦限定ユニフォーム、さまざまなファンサービスが始まり、華やかではあったが、戦いの空気が薄れ、過剰演出の時代が始まったととらえるオールドファンもいる。

 相手チームの情報が少ない戦いの中、投手有利の傾向があり、ストライク先行の攻めができ、かつ空振りを取れるウイニングショットを持つ投手が“完全支配”する試合も目立った。もちろん、もともと勝てるタイプではあるのだが、打者の情報不足が追い風になり、5月13日には西武西口文也が9回二死までノーヒットノーラン、20日には中日川上憲伸が8回二死までパーフェクトに抑えた。

 打者でブレークしたのが、おかわり君こと西武の中村剛也だ。空振りを恐れぬ豪快なフルスイングで沸かせ、期間内12本塁打は横浜・多村仁らと並ぶトップタイ。また喫煙の不祥事と右ヒザ関節炎で出遅れていた日本ハムダルビッシュ有(現カブス)が6月15日の広島戦で初登板初先発初勝利を飾っている。

 初代王者として賞金5000万円を手にしたのは、パのロッテだった。MVPは投げて5勝、打っても10打数3安打3打点の小林宏之。ロッテの熱狂的な応援が全国区となったのも、この年だった。バレンタイン監督率いるロッテは、この勢いのまま旋風を巻き起こし続け、年間勝率ではソフトバンクに及ばず2位だったが、プレーオフに勝利し、当時の規定で74年以来のリーグ優勝、さらに阪神を破って日本一にも輝いている。

 一方、セは交流戦前に2位・阪神に5ゲーム差をつけていた中日が15勝21敗と大失速。V逸の要因となった。直前に主砲T.ウッズが暴力事件で10試合の出場停止になっていたこともあるが、落合博満監督の下で構築した緻密な野球が、パの“イケイケ野球”に粉砕された感もあった。

DH制度のあるなし?


昨年、交流戦で勝率1位に輝いたソフトバンク


「長すぎる」という声もあり、その後07年から24試合、15年には18試合ずつに減らしたが、一貫して変わらないのは、「パの優位」だ。17年まででパは通算981勝872敗55分。しかも、セの勝ち越しは09年だけ。優勝(勝率1位)チームも12年、14年の巨人だけと大きな差がついている。

 一つの理由として投手の差が挙げられる。変化球、制球力、さらに駆け引きで勝負するタイプが多いセ投手に比べ、力勝負のタイプが多いパ投手のほうが、情報が少ない短期決戦では有効であり、また、DHがあるパでは代打交代がない分、先発がより長いイニングを投げることができ、しかも投手の打順で“息継ぎ”できず、実戦でスキルが磨かれやすいというものだ。

 さらに過去で言えば、ダルビッシュ(交流戦通算17勝8敗、防御率1.67)、田中将大(交流戦通算21勝6敗、防御率1.94。楽天−ヤンキース)、大谷翔平(交流戦通算9勝1敗、防御率2.20。日本ハム−エンゼルス)らスーパーエースがパに君臨していたこともある。日本ハムの果敢なドラフト戦略も一因と言えるかもしれない。

 打者側からすれば、積極的にファーストストライクから振ってくるタイプが多いパのほうが、どちらかと言えば慎重なセに比べ、投手同様、短期決戦では有利と言われる。加えて、セはDH制をうまく使い切れていない印象がある。代打や守備に難があるタイプを入れることが多いが、あまり打線がパワーアップしたように思えなかった。

 ただ、2連戦が続いた24試合制に比べ、3試合制の18試合は波乱が起きにくい、という見方もある。2戦だと初戦を落とすと連敗の重圧が生まれ、2敗、つまり全敗が次のカードにも影響を与えるからだという。
 実際、17年の交流戦順位は1位・パ1位ソフトバンク、2位・セ1位広島、3位・パ2位西武、4位・セ2位阪神、5位・パ3位楽天と上位は最終順位と同じパターン。互いの情報も行き渡ったか、セ、パの差はつきづらくなっている感もある。

 チーム別ではソフトバンクの強さが際立つ。優勝は08、09、11、13、15、16、17年の7回。192勝114敗12分、勝率.628といずれも12球団最高。選手層の厚さ、特に先発陣の充実が強みとなった。ただ、今季に関しては故障者の離脱が相次ぎ大きく戦力ダウン。4年連続勝率1位は簡単ではあるまい。
 パでは打線が目覚めればだが、西武はセ球団の脅威となるはずだ。その西武を総力戦で追う日本ハムにも注目だ。

 セで、交流戦で一番勝率がいいのは.524の巨人だが、17年は6勝12敗と大苦戦だった。今季は投手陣の絶対的エース、菅野智之がさらなる進化を見せ、打線でも阿部慎之助マギーの使い方に交流戦対策を感じるが、先発陣が徐々に崩れ始め、前年同様4連敗で交流戦突入。17年は13連敗の悪夢となったが……。

 交流戦は同一リーグ内の対戦がなく、星の食い合いがないので、1強が一気に走るケースがある。
 それがセの連覇を飾った広島だった。特に顕著だったのが、16年だ。広島は11勝6敗で貯金5だったが、ほかは9勝9敗の巨人、7勝11敗の阪神、DeNA、中日、6勝12敗のヤクルト。広島はもともと交流戦を苦手とし、07年は5勝18敗1分とひたすら負け続けた時期もあるが、それで対策を練ったのかもしれない。
 今季は先発陣に不安があるが、打線の層の厚さは変わらない。現状パ球団に唯一苦手意識のないチームとも言え、丸佳浩も復帰し、野村祐輔の一軍マウンドが見えてきており、過去2年の再現は十分あり得る。

写真=BBM
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