今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 尾崎行雄に非難殺到
今回は『1962年4月30日号』。定価は40円だ。開幕から東映旋風が吹き荒れている。
最大の注目は開幕から3連勝の新人、17歳の尾崎行雄。快速球で席巻していたが、ロッキングモーションと呼ばれる両腕を前後に何度かぶらぶらさせてから投げるフォームには「ナマイキ」と非難殺到。
西鉄の
豊田泰光は、
「なんだい一体、あのロッキングモーションは。その上、マウンド上でにやにやしているあのざまは。大投手になるには大投手のマナーを学べって言いたいね」
と手厳しい。
東映投手陣では、もう一人の大型新人・安藤元博の評判もよく、またエースの土橋正幸も安定している。
土橋がなぜまだ寮にいるのかも話題になっていた。答えは以下だ。
「家にいるとうるさいんだ。商売をしているだろう(浅草の魚屋)。朝は早いし、ゆっくり寝ようと思っても寝られない」
開幕2連戦で
巨人に連勝した
阪神は、14日からの3連戦も2勝1敗と勝ち越し。
長嶋茂雄の不振が響いているようだ。また、有名な阪神・藤本定義監督の巨人・
川上哲治監督“いじり”も始まっていた。たとえば、川上監督を先頭にベンチに巨人の選手が向かう姿を見るや記者たちに、
「監督が先頭になってグラウンドに入ってくるのはおかしいな。監督がやる気になっても選手にその気持ちがなければ勝てんぞ」
とおどけた口調で言って笑いを取る、といった具合だ。
『12球団週間報告』の国鉄ページでは「バッティング投手」という項がある。当時はいまのように専属がいたわけではないが、いつの間にか事実上そうなっている投手もいたようだ。国鉄の場合、ベンチ入りからもれた投手が打撃投手となり、練習が終わると着替えて帰るパターンだった。
入団2年目、
稲垣博愛もそうだった。
「僕は去年はベンチに入っていたのに、今年は野手の人数が増えてベンチから出なければならなくなった。バッティング投手をしていると、ストライクを通そうと思っているうちに腕が縮こまってくる。5年も6年もこれをやっていると、もう試合には出られないほどになってしまう。もう試合に出ることなど望んでいないならいいですが、僕はあくまでも試合に出ることを前提にしています」
少し物悲しい。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM