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【MLB】「先発の力が弱いときは、中継ぎを先発起用」の発想は斬新か、それとも……

 

スモールマーケットのレイズらしい奇策で、2試合連続で先発のマウンドに上がったロモ。今後もこういう作戦を多用するのだろうか


 レイズが現地時間5月19、20日のエンゼルス戦でリリーバーのセルジオ・ロモを2日連続で先発させたことが話題になっている。彼のあとに、チームの4番手、5番手の先発をリリーフさせた。「人類にとっての大きな一歩」とアメリカのスポーツメディアは茶化した。

 右のサイドスローでスライダーが得意なロモは今季右打者に被打率.192、左打者に.346。MLB11年目を迎えるキャリアにおいても右に.186、左に.241だ。今季エンゼルスは一番から四番まで97パーセント右打者を起用。現地時間5月20日は大谷翔平が投手で先発するため、19日も20日も打者では出てこない。そこにつけこんだケビン・キャッシュ監督の作戦だった。

 狙い通り、19日は1回を三者三振、20日は1回1/3を3三振、2四球で無失点だった。その後、19日は本来先発の左腕ライアン・ヤーブローがリリーフで6回1/3を1失点で試合も5対3で勝った。ヤーブローは初回、マイク・トラウトや右の強打者と対戦せずに済んだことがプラスに働いた。

 20日は右腕マット・アンドリース、左腕アンソニー・バンダら3人の継投。しかし打線が大谷に封じられ2対5で敗れている。レイズはクリス・アーチャー、ブレイク・スネル、ジェイコブ・ファリアの軸になる先発3人組は信頼できるため中4日で先発させている。しかしながら4番手、5番手が弱点になっており、ここが安定せず、2、3イニングで降板させブルペン勝負をしたこともあった。

 そこで、4番手、5番手の日に前代未聞のアイデアを試したのである。この起用法、賛否両論だった。賛成はデータからくるもの。1回は今季最も点が入りやすいイニング(平均0・59点、一番入らないのは2回で平均0・41点)で、1回にリードしたチームは246勝95敗(勝率.721)。先発で立ち上がりの悪い投手はいるのであるため、リリーフ投手を先発などで使えば、勝つ確率が高まるというもの。

 反対はリリーフ投手の負担が増え、良いリリーフ投手はやはり後半、接戦に持ち込まれた状況のためにとっておくべきという伝統的な考えによる。エンゼルスのザック・コザート内野手は、報酬の面から反対した。通常高給を取る先発投手の価値が下がることにつながり、選手の年俸が全体的に下がることを危惧する。

 とはいえ、このコラムで何度も触れているが、先発投手の投げるイニング数が減り、リリーフ陣で勝つ野球に変わってきているのだから、順番の入れ替えを試してみるのはありだと思う。もともとスモールマーケットで資金力に乏しいレイズは、新しいアイデアを導入することで強豪ヤンキース、レッドソックスと競ってきた。

 守備シフトをア・リーグでいち早く頻繁に活用したのも同球団で、今ではすべての球団がマネをしている。果たしてこのアイデアも広まっていくのか? 確かなのはマックス・シャーザーやジャスティン・バーランダーのようなエースが投げる試合では、ありえないということ。しかし4番手、5番手の日なら、試す価値はある。キャッシュ監督も「またやる」と明言している。二刀流大谷VSリリーバー先発。斬新なアイデアは面白い。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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