今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 尾崎ミサイル打線を牛耳る
今回は『1962年7月9日号』。定価は40円だ。6月21日、大毎戦で東映の17歳・
尾崎行雄が16勝目を挙げた。スポーツ紙は「なんでもいいから尾崎のことを書けば売れる」状況だったようだ。
週べでも、東映の「無私寮」での取材の様子が掲載されている。
取材ラッシュで寮には依頼の電話がひっきりなし。親会社が東映だけに女優との対談企画もたくさんあった。
「田代みどりちゅう人や山本富士子、山東昭子、女優ばっかりでしょう。どんな話をするか? つまらん話ばっかりです」
ファンからのプレゼントに囲まれたベッドには、本人なのか、先輩なのか分からないが、マジックでの落書きだらけ。その中に、明らかに尾崎の文字の一文があった。
「人生は太く短く」
6月25日、恒例の北海道シリーズのため千歳空港に降り立った
巨人、阪神の面々。同じ便だったのだろうか、阪神・藤本定義監督が巨人・
川上哲治監督の姿を見つけ、「哲! 巨人─阪神戦に恥じないゲームをしようじゃないか」と肩をポンとたたいたという一文があった。
この時点で1位は大洋、2位阪神、3位巨人の順だったが、6連敗中だった巨人ナインに元気はなかった。
阪神・
青田昇コーチは顔見知りの記者にドスをきかせた声で言う。
「いまの巨人のどこが強いというんじゃ。威圧感なんて少しもないよ。村山(実)、小山(正明)といったピッチャーが巨人に何人いるんだ。今年の優勝チームは阪神しかない。あったら俺に教えてくれ」
国鉄・
金田正一の「連投廃止宣言」というのもあった。
「無理の中でも連投がいかん。わしも若気の至りでよう連投したが、もうしません」
しかし、実際には連投もあった。しかも金田が自ら志願しているように見えた。
金田の言い訳はこうだ。
「買って出たことはないが、なにかワシがリリーフに出んといかんような雰囲気がグラウンドにただよいだし、ついブルペンに走ってしまう。ほんとにわしはムードに弱い男ですな」
この年、金田は22勝17敗。12年連続20勝以上となった。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM