今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 阪神・藤本定義監督が燃えている
今回は『1962年8月6日号』。定価は40円だ。引っ張ってきた話題、
巨人・
王貞治の「一本足打法」が「週べ」でいつから書かれ出したか、であるが、ようやくフォームに触れた記事があった。
平和台でのオールスターのため、巨人、
中日、
広島が宿舎にしていた金洋荘でのショートインタビューだ。王はホームランが量産体制に入ったことで、四番に座る機会も増えていた。
──四番について。
「僕とすれば四番でも一番でも同じことですよ。要は打たなければいけません」
──大下(弘。西鉄ほか)、別当(薫。毎日ほか)なみの足をひょいと上げて打つバッティングについて。
「やはり振りが鋭くなります。タイミングの取り方さえマスターすれば、この打法のほうが長打は出るようになると思いますね。当分は続けるつもりです」
オールスターの目玉は、前半戦18勝3敗の東映・
尾崎行雄だ。ただ、右手中指のマメでややペースダウン。
宿舎では「痛むから」と左手で箸を使って食事をしていたが、指を見ると赤チンが塗ってあった。
「僕の生命はあくまでスピードボールにある。とことんまでスピードで勝負していきます」
という言葉もあった。いずれにせよ、パは東映が大独走。
水原茂監督も尾崎に無理をさせる気はないようだ。
一方のセは
阪神、大洋が激しく競って、3位の巨人はやや引き離されつつある。
盛り上がっているのは阪神、それもファンだ。一塁側スタンドは優勝目前のような騒ぎになっていた。
燃えているのは阪神の57歳のベテラン監督、藤本定義も同じだ。
「こうなったらうちの優勝への執念が強いか、大洋が強いかだ。勝負をやる以上、執念が強いものが勝つ。根性があるとかないとかは、この執念の濃淡なんだ」
また、この時点で「うちと大洋は、終盤引き分けの差が影響するかもしれない」とも言っている。この年は終盤、確かに大洋と阪神は歴史的な競り合いをする。さすが智将藤本、読みが深い。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM