16年目の今季も楽天でユニフォームを着る久保
6月13日発売の週刊ベースボールでは、松坂世代特集が組まれる。その中で、現役の松坂世代の一人、楽天・
久保裕也にインタビューをした。穏やかな雰囲気をまとう久保は、太陽のような光を放つ
松坂大輔とは対照的にも思えた。
4月30日の
DeNA戦、松坂が日本球界で4241日ぶりの勝利を挙げた。お立ち台では「小さい子たちは僕が誰だか分からない子も多いと思うので、また顔を覚えてもらえるように頑張りたいと思います」とコメント。一世を風靡した男の復活宣言に、ナゴヤドームは沸き上がった。一世を風靡したとまではいかなくても、2010年にはオールスターにも出場している久保。この言葉には共感を覚えたのではないかと聞いてみると「意外とそうでもないですよ」と返ってきた。
巨人時代のまだ若いころの話だ。
「一人暮らしを始めてすぐ、
原辰徳監督(当時)がよく行くお寿司屋さんに、あえてジャージを着て行ったんです。気づいてもらえるだろうと思って……。そうしたら、『お兄さん、学生さん?』って言われました(苦笑)」
スターぞろいの中で久保が放つ穏やかな光は、なかなかファンまでは届かなかったようだ。
「ジャイアンツ時代、『11番誰? 11番誰!?』と話す子どもたちに『久保だよ、久保だよ〜』って自分で言っていましたから(笑)」
黄金世代の一人とはいえ、その歩んできた道のりは大きく違う。それでも、松坂と同じように長くトップの世界で生き続けている。
「プロでここまでやってきたわけだから、やっぱり最後もプロで終わりたい」
戦力外を通告されても、プロ以外の道は考えなかった。柔軟で謙虚な考え方ができる一方で、プロで生き抜かんとする強い意志が、久保のプロ野球人生を支えているのだ。
決してギラギラした道を歩んできたわけではないが、16年目の今季も、確かにプロ野球界にその足跡を刻んでいる。酸いも甘いも知るからこそ、衰えることがない探究心。その奥深い考えと強い決意については、週刊ベースボールで読んでいただきたい。
文=阿部ちはる 写真=BBM