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プロ野球仰天伝説

広角打法を会得するためにまずは英会話を勉強した張本勲/プロ野球仰天伝説180

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

新外国人の打撃に魅せられて


東映・張本勲


 史上最高の3085安打をマークした張本勲だが、4歳のときに右手くすり指と小指にやけどを負い、そのために本来は右利きなのに左利きになったというハンディの持ち主だった。1959年、東映に入団した張本がまずぶつかったのは、そのハンディのある右手を強くしろ、という指令であった。

「当時あまり行われていなかったティーバッティングを右手一本でやりましたよ」と張本は述懐する。毎日200本以上も右手だけのティーバッティング。これによって入団3年目に打率.336で初の首位打者を獲得した。

 張本のバッティングはコースに逆らわず打ち返す広角打法。同時に、同じコースに来た球でも、左右どちらにでも打ち分ける“扇打法”も開眼した。これらを会得するためまでに、張本がやったのは、まず英語の勉強からだった。初めて首位打者を獲得した翌62年、張本を愕然とさせる打者が現れた。近鉄に入ったブルームだ。

 ブルームは同じコースの球を左右に打ち分け、また鮮やかなバントヒットで打率を稼いで62、63年と連続して首位打者をさらった。張本はこれを見て「ブルームからあの打法を盗み取ってやれ」と考え、英語を勉強してブルームと親しくなる努力をした。

 異国でプレーする外国人選手は通訳や同僚がいても、どうしても寂しいものだ。そこへ英語で話しかけられるとうれしい。ブルームは張本に、広角打法のコツをあっさりと教えた。

 ただ、もちろん教わったからといって、すぐにできるものではない。相手投手のクセ、相手の守備陣形を見て、その間へ打つといったことは大変な努力と工夫がいる。それを完成させたのは66年からだったという。翌年から張本は4年連続で首位打者に輝いた。

写真=BBM
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