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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

リクエスト制度、その後。テクノロジーの導入はあるのか?

 

判定について協議を行う審判団。審判員の判定を補助するシステムはさらなる変化があるのだろうか


 賛否両論あったリプレー検証による新ルール(リクエスト制度)も、ここまで、ファンの間ではおおむね好意的に受け止められているのではないか。審判団の検証中、オーロラビジョンに映し出される映像を見て、あるいはテレビの前で、ファン一人ひとりがジャッジを下すのも、1つの楽しみになっているように思う。

 とはいえ選手の側(特に投手)からすると、検証中の“間”がその後のプレーや展開に与える影響は少なくないという。例えば、リクエスト対象が二死からのプレーだった場合。アウトの判定を受けてチェンジを疑わずにベンチに戻った投手への影響(判定が覆った場合)は計り知れない。制度を導入したからには、今後、検証から判定までをこれまで以上にスムーズに、迅速に行なえるように改善すべきではないか。

 例えば、ビデオ判定環境。NPBよりも一足先にリプレー検証(ビデオ判定)が導入され、2014年に拡大された「チャレンジ制度」を持つMLBでは、チャレンジ用のオペレーション・センターをニューヨークに置き、30球場それぞれに7〜12台設置したカメラの映像をここで一括管理。専門の判定員(分析担当審判員)が見極め、各球場の審判員と連絡を取り合って最終的なジャッジを行っている。

 一方でNPBで使われるのは中継テレビ局の映像と、当初から懸念材料の1つに挙げられていた。また、チャレンジを実行してから2分以内に判定を下すことが定められているMLBに対し、NPBはリクエストの要求があってから5分以内。改善の余地は十分にある。

 ちなみに、サッカーではボールがゴールラインを超えたかどうかをテクノロジーの力(ハイスピードカメラや磁気センサーなど)を借りて正確に判定しようという「ゴールラインテクノロジー」が2014年に開催されたFIFAワールドカップのブラジル大会から導入されている(各国リーグ、大会ではそれぞれ)。現在開催中のワールドカップのロシア大会では初の試みとしてビデオ・アシスタント・レフェリー制(VAR)を導入し、毎試合スタジアム内の審判1人、アシスタント・レフェリー3人のほかに、リプレーオペレーター4人がスタジアム外で数台のモニターで試合を監視しており、ビデオ判定を行うべきだと判断した時に主審に伝えているという(逆に主審が求める場合も)。

 競技は違えど、数え切れない疑惑の判定や誤審を経験し、莫大な費用のかかるテクノロジーを用いてでも「より正確なジャッジを」というのがスポーツ界の流れ。現状は要求があった場合(審判団が必要と求めた場合も)のビデオ判定のみ(この環境にしても問題あり)の野球界は、審判員を補助する目的のテクノロジーの導入に対し、今後、どのように向き合っていくのだろうか。

文=坂本 匠 写真=BBM
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