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【MLB】大谷の活躍により、メジャー球団が二刀流育成を現実に考え出した?

 

レイズで二刀流を目指すマッケイ(写真は大学時代)。今季のドラフトでも二刀流選手を指名するなどレイズは二刀流の育成に力を入れ出した?


 かつてイチローのチームメートとして、マリナーズでいぶし銀の働きをしたジョン・オルルド一塁手は、ワシントン州立大時代、二刀流で知られた。

 特にすごかったのは2年生のとき。打っては打率・464、23本塁打、投げては15勝0敗、防御率2.49。一塁手と投手の両方でオールアメリカンに選ばれている。NCAAは2010年から、そのシーズンのベストの大学二刀流選手を称えるジョン・オルルドアワードを新設した。1年前、レイズから一巡4番目に指名され、メジャーでも二刀流を目指すブレンダン・マッケイはルイビル大時代3年連続でこの賞に輝いている。有能な人材に恵まれたアメリカのスポーツ界だから、もともと人材はいる。

 オルルド以外にも、殿堂入りしたデーブ・ウィンフィールドと、トッド・ヘルトンが有名だ。2人に関しては野球で二刀流プラス、バスケットとアメフットでもそれぞれに勇名をはせていた。

 今でもデビジョン1の297大学のうち、7割以上のチームに二刀流選手が一人はおり、複数の選手が二刀流で活躍するチームも少なからずある。それには1チーム35人と、選手枠が限定されている問題がある。毎年必ずケガ人が出るのに、プロのようにマイナー組織はなく、トレードもできない。限られたメンバーで戦い抜くためには、能力の高い選手には、両方やってもらいたいのである。

 しかしながら、その能力の高い彼らもプロに行くと一つに絞る。世界中から優秀な才能が集まるマイナー組織で生き残り、勝ち上がるためには仕方がないことだ。球団も選手と契約を済ませ、傘下のマイナーチームに送るときに、必ず野手か投手か決めてきた。思うように育たず、数年後、野手が投手に、投手が野手に転向したケースはあるが、両方同時はなかった。そこに大谷翔平が登場した。果たしてメジャーは本気で二刀流を考えるようになるのか?

 レイズは今年のドラフトでも、昨年のマッケイに続き二刀流選手を上位で指名した。全体71番目、カリフォルニア大のタナー・ドッドソンだ。中堅手兼投手として昨季、打っては打率.320、27打点、12盗塁、投げては2勝1敗11セーブ、防御率2.48だった。

 決してマッケイの1年目が順風満帆に行っているわけではない。今季は1Aで、投手として4勝2敗、防御率2.81と良い成績だが、打つほうは打率.230、2本塁打と物足りない。大学最後のシーズン、64試合で18本塁打を放ったパワーは影を潜めている。

 スカウトたちに「大谷の活躍で今後二刀流選手がメジャーでも増えると思うか?」と聞くと、大抵は「大谷は特別さ。投打で、あれだけ高いレベルのパフォーマンスができる選手はこっちでもなかなかいないよ」と首を振る。

 確かにそうだろう。だがMLBきってのイノベイティブな球団であるレイズは二刀流育成をシステム化しようとしているようだし、大学はジョン・オロルドアワードで二刀流選手の活躍を讃えてきた。環境が整ってくれば、次のすごい才能が現れるのではないか。

 大谷の二刀流はまだメジャーで成功したとは言えないが、多くの関係者が可能性を感じ、注視しているのは確かなのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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