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リプレイ検証での誤審再発を防ぐには?

 

6月23日に謝罪会見をする友寄審判長(左)と仲野パ・リーグ統括(右)


 開幕直前、リクエスト導入にあたり友寄正人審判長へインタビューを行った。ある質問で審判長は「与えられた中で最善を尽くしていくだけです」と苦笑いをした。このときの表情が、先日の謝罪会見を見ながらよみがえってきた。

 質問の内容はこうだった。「メジャーではMLB機構独自にカメラを設置して、検証しています。一方で日本ではテレビ局の画像で判断するしかないということですが、これには限界があるのではないでしょうか。そして地方球場では特にそうなるのでは? それでもやるということでしょうか?」

 6月22日のオリックスソフトバンク戦(ほっと神戸)の延長10回表。ソフトバンク・中村晃選手の打球が、リクエストによるリプレイ検証でホームランとなり、これが決勝点になった。しかし試合後に誤審と認め翌日、友寄正人審判長などが謝罪会見を行った。

 さまざまな論争が起こっているが、今後も現在の画像で検証するのであれば同じ誤審が起こることも考えられる。では、いかに防いでいけばいいのか。一部には映像判定を行う専門の担当者を置くべき、というのもある。だがやはりNPB独自のカメラをできるだけ地方も含め多く設置し、今季取り入れているテレビ局の画像と両面から検証するのがベストだろう。

 しかし、設置には多くの費用が掛かる。メジャー・リーグの場合、カメラを30球団に設置するだけの予算があった。現在のMLBはバブルにも近い状況だけにそれだけのお金を使える。なぜそれだけの予算があるのか。MLBは世界のプロスポーツでは例をみない「反トラスト法免除法理」の恩恵を受けている。つまり独占禁止法が効かない団体なのだ。これにより大型契約も結べ、放映権も莫大だ。そして、球宴はもちろんポストシーズンからワールド・シリーズまでMLBが主催する。

 一方、NPBは「反トラスト法免除法理」の恩恵などはもちろんなく、球宴と日本シリーズのみの主催と放映権があくまでも直接的な収益になる。ここが大きく違う点で、収益も雲泥の差だ。

 そこで提案させてもらうなら、1日でも早く全球場にカメラを設置する場合(地方も含め)、どれくらいの費用が掛かるのか公表するほうがいいと思う。その費用が莫大であるならば、「今後の誤審を避けるためのビデオ設置費用」という名目で、今季のクライマックス・シリーズ全試合の主催&放映権はNPBでやれないか、という提案を該当球団にするのはどうだろうか。もちろんNPBの威厳に関わる問題だ。しかし、今後こういう誤審が続き、選手や首脳陣、そしてファンからの絶望や落胆、怒りの声が上がり続けることに比べると……いかがであろう。

 収入形態が違う中で、MLB中心に動いていく国際野球の流れの変化に合わせていこうとするには、どこかで必ず無理がでてくる。今回のこの誤審が大きなきっかけとなり、根本的な部分から見直すことも必要な気がするのだが。

文=椎屋博幸 写真=石井愛子
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