長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 2年連続最多勝&200奪三振
「2年目のジンクスについては、終わったときにあらためて聞いてください」
村田兆治氏(元
ロッテ=解説者)が「2年目のジンクスをどう思うか?」とキャンプで尋ねると、近鉄・野茂英雄はこう力強く答えたという。
投手タイトル総なめの8冠を収めたルーキーイヤーの1990年。明けて91年、野茂の周辺は前年以上にかまびすしかった。誰もが口にしたのが“2年目のジンクス”。
「雑音なんか気にしない。とにかく自分がやらなくてはしようがない」
4月7日、開幕2戦目(対
日本ハム)から5月9日の同カードまで6試合連続2ケタ奪三振のプロ野球新記録を達成。その後は
西武・
工藤公康、
オリックス・
星野伸之と最多勝を争った。
10月5日は、その3人が投げて3人とも勝利を手にした。野茂は17勝、星野と工藤は16勝。野茂と工藤は、その後も登板したが勝敗はつかず、野茂が1勝差で単独最多勝に輝いた。
しかし、野茂いわく「大事な試合に勝っての17勝なら満足ですが、(優勝した)西武に勝てなかったのは残念」。エースとして「何よりも優勝したい」と願っていただけに、優勝した西武相手の5敗は、悔やまれるものだった。
奪三振数は、前年とまったく同じ287個。新人の年から2年連続200奪三振は、
江夏豊(当時
阪神)以来23年ぶり8人目の記録になる。
この年の成績は17勝11敗1セーブ、防御率は3.05。ジンクスを“トルネード”でしっかりと吹き飛ばした。
写真=BBM