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ベースボールゼミナール

左ピッチャーは背が低くても通用する?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.プロ野球を見ていると、身長160センチ台のピッチャーでは、巨人の田口麗斗選手や、ヤクルトの石川雅規選手のように、左で活躍する選手はいますが、右ではあまり見たことがありません。左は背が低くても通用するということでしょうか。もしそうなら、その理由を教えてください。(三重県・39歳)



A.身長の低い右は通用せず、左なら通用するという説は成り立たない。



 果たしてそうでしょうか? 例えば昨季11勝を挙げた楽天美馬学選手は169センチですし、今季はあまり状態が良くないようですが、昨季までの9シーズンで369試合に投げたリリーフのスペシャリスト・谷元圭介選手(中日)も167センチ。この2人に共通しているのが、小柄ながら馬力もあり、なおかつストレートにも力強さがあるということです。

 また、昨季限りでNPBからは離れてしまいましたが、最優秀中継ぎ1回、最多セーブ3回で日本ハムのリリーフエースとして長く君臨した武田久(現日本通運選手兼任コーチ)なども公称170センチではありましたが、大きくはない体から地面から浮き上がるようなストレートでバッターを圧倒していました。

 これ以外にも、もっと体格・体型的に似たプロ野球もいますが、今挙げただけでもこれほどの一流どころがいるのですから、身長の低い右は通用せず、左なら通用するという説は成り立たないと思います。

 左右に関わらず、上背のあるピッチャーと比較し、上背のないピッチャーは平均的にリーチが短いことは確かです。この短い腕を強く振る能力があるかないかが、成功するかしないかの分かれ目ではないでしょうか。楽天の則本昂大選手は、身長178センチですが、プロの世界では決して大きいわけではないものの、あの腕の振りの鋭さがあるからこそ日本代表するピッチャーの1人になり得たのです。

 逆に面白いのは、質問で挙げられた左腕2人です。私が例に挙げた右の4人とはタイプが異なり、ボールの力というよりも、キレと変化球で勝負するタイプ。左腕というのは、振る腕の側に心臓があるため、1球1球の消耗度が右とは異なると言われています。西武菊池雄星選手のような強いボールを投げるタイプも稀にいますが、この心臓の位置がタイプに影響している可能性はあります。左特有のコンディショニングがあるとも言われていますね。

 なお、石川選手や、田口選手が活躍できている理由の1つに、独特の角度と、その角度からの変化球を含めた制球力が挙げられると思います。左の絶対数が少ないというのはひと昔前の話で、いまは左腕も多い中で彼らが活躍できるのは、そういった武器があるからだと思います。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM
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