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【MLB】平野の巧みな投球術と守備シフトがかみ合い併殺が増えた

 

走者を出してからの平野の投球は圧巻であるが、その一番の要因はコーナーへ投げ分けるエッジ率が高いことに起因している


 22試合連続無失点で、防御率は1・32(現地時間6月24日終了時点)。オールスター出場に値する活躍を続けているダイヤモンドバックスの平野佳寿。特筆すべきは走者なしの被打率が・222なのに対し、走者が出ているときは・098と圧倒的にいいことだ。

 6月24日、パイレーツ戦の8回先頭打者が中前打で出たが、次打者をクイックでタイミングを外し、フォークで遊ゴロ併殺打に。実は今季8個目のゴロの併殺で、MLBのリリーフ投手ではロイヤルズのブライアン・フリンの9個に次ぐ2位タイ。平野に「日本でこんなに併殺を取る投手だったのか?」と聞いたところ「そんなに多くなかった。こっちに来て多いなと自分でも思っていますけど」と笑った。

 併殺が多くなった理由はシフトがある。2日前の同じパイレーツ戦では遊撃手が二塁ベースの右側に守っておりそこにゴロが行き、この日は左側、定位置寄りに立ったことで再び打球が吸い寄せられていった。守備シフトを担当するチームのトニー・ペレチカ内野守備コーチは「われわれは膨大な打者のデータから、打球の方向を予測するが、それもヨシが狙い通りのコースに投げる制球力があるから。コントロールが悪い投手だとデータ通りになりにくい。加えて低めに集められるし、フォークの落差でゴロになりやすい」と解説する。

 8個の内、5個でゴロを処理し2個、二塁ベースで送球を転送したニック・アーメド遊撃手は「ヨシは真っすぐとフォークの緩急に加え、走者が出ると、左ヒザを高く上げるモーションから、ヒザを上げないクイックに変えるから、そこでも打者はタイミングを外され、当てただけのスイングになる。しかもいつも捕手の構えたところに投げられるから、遊撃手としては打球が飛びそうな方向に、1、2歩先に移動できる利点もある。もちろんクイックで一塁走者のスタートが遅れるのも併殺が増える理由だよ」と説明する。

 平野はメジャーで併殺が増えたことについて「データでやっているからだと思います。僕が投げていてもそうですけど、ほかの人のを見ても、ちゃんとその通りボールが転がっていく。(シフトは)合理的な考え方。日本だと逆打ちの練習とかするのでやりにくいですけど、こっちだと引っ張りの打者はずっと引っ張っている印象。だから効果的」と歓迎していた。

 MLBで最近出てきた指標にエッジ率がある。ストライクゾーンの端、境界線のコーナーにどれだけ投げているかだ。メジャー平均が30・4パーセントで、平野は35パーセント。大谷翔平の28・9パーセント、ダルビッシュ有の29・3パーセントより遥かに数字が上だ。95マイル以上の真っすぐを駆使し力でねじ伏せるのではなく、境界線のボールで、シフトの網に引っ掛かける。もっともコントロールに関して本人は、真ん中にいかないように気をつけているだけで、それほど神経質になっていないと明かす。

「基本低めを狙っていますけど、フォークが抜けて高めに行ってのゴロもある。そこはもう結果オーライで。それよりコースをしっかり投げる。右打者なら結構インコースに投げて、詰まることが多いので」と平野。ここまで34イニングで31奪三振だから、三振も取れるが、守備との巧みな連携が平野の強みなのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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