今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 楽しきタイガー・タウン
今回は『1963年3月4日増大号』。選手名鑑号ということで定価は10円上がって50円だ。
前回、冷戦状態と書いた巨人・
川上哲治監督とコーチを退任し、評論家となった
別所毅彦だが、別所が後日、スポーツ紙に書いた評論記事では、「誰も声を出さず静寂そのもの」とか「サラリーマン的ありきたりの練習しかやっていない」とボロクソ。川上監督に対しても「信念に生きる男と自認する川上監督も、裏を返せば周囲を気にする弱い男と知っている」。
もはや冷戦どころか、宣戦布告だ。
アメリカのタイガー・タウンでは
阪神の選手が観光を交えつつ元気に練習。
現地のファンと藤本定義監督のこんなやり取りも紹介されていた。
藤本監督が
小山正明と
村山実のどちらがエースか尋ねられた際である。
「両方だ」
「エースは一人だ」
「でも、うちは2人だからしょうがないじゃないか」
知らないほうがいい質問ができることは多い。
これも以前の号で紹介した西鉄の
後藤修の話もあった。7球団を渡り歩く球歴も異色だが、性格も変わっていたようで、食事をするときも一人、暇さえあれば本を読んでた。
「ドストエフスキーはいいですね。彼の作品はほぼすべて読みました。でも主人公の生き方に魅せられているうちに、こちらが苦しくなってしまう。考え込むんですね」
記者が「読書は野球に関係ないと思うが」と聞くと、
「ええ、全然ありません。楽しめればそれでいいじゃないですか」
とニコリともせず言ったとあった。
後藤の性格より、野球選手は野球だけしていればいい的な記者の質問に違和感がある。
入院中だった赤嶺昌志が亡くなったというニュースもあった。賛否両論あるが、球界の功労者の一人であることは間違いない。
では、またあした。
<次回に続く>