長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 初優勝の胴上げ投手にも
1975年、広島の初優勝までの道のりでは、
阪神、
中日との息詰まるデッドヒートが展開された。その中で、広島のムードを高めたのが金城基泰の復活だった。
74年、金城は20勝15敗で最多勝をマークしたサブマリン。しかし、セ・リーグの全日程が終了していない10月12日、大分・別府で友人の車に同乗して事故に遭い、顔面を強打。フロントガラスの破片で両目を傷つけ、視力をほとんど失った。「再起不能説」まで流れた。
だが、特殊なコンタクトレンズの使用で、視力も日常生活に支障がない程度に回復。退院したのは事故から半年が経った4月末だった。
そこから8月の一軍復帰を目指して世紀への道が始まった。7月23日、紅白戦で3イニングを1安打。8月2日の大洋戦(広島)で復帰のマウンドに立った。この試合は1イニングを無安打無失点。そして、8月7日の
ヤクルト戦(神宮)、6対7と1点をリードされ、なおも7回二死三塁のピンチで金城がマウンドに上がった。
金城は9回までの打者7人に対してパーフェクトピッチング。打線も金城の好投に応えて8、9回に4点を取り、逆転に成功。金城にシーズン初勝利を贈った。この勝利で広島は7月8日以来の首位にも立った。
10月15日、初優勝を決めたマウンドに金城がいたこともドラマを演出した。
写真=BBM