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【MLB】ドジャース・前田健太の好投が増え、奪三振率が高くなった理由

 

今季は2種類のチェンジアップを使用し、また投げ込むゾーンを変えたことにより成績もこれまで以上に向上して安定した投球を続けている


 ドジャースの前田健太投手が、今季先発投手としてのレベルを上げている。その要因として注目したいのは2つのデータだ。現地時間7月6日のエンゼルス戦まで、9回あたりの奪三振数は2016年の9.2個、17年の9.4個から、今年が10.9個と一気に上昇した。

 一方で9回あたりの許した本塁打数は16年の1.0本から、17年は1.5本と増えてしまったが、今年は0.7本と急激に減らした。規定投球回数に若干足りないが、全体ランクに入れれば上から11番目と8番目に入る。言うまでもなく、このデータでトップ10に入るのは各チームのエース級ばかり。MLBのエリートレベルに迫っている。

 7月11日には前田本人も「しっかりした内容を今年は残していきたいと思っている。それが今はできている」と自信を漲らせていた。三振についてはチェンジアップが、スライダーに匹敵する決め球となったことが大きい。今季打者がスイングした際の空振り率はなんと50パーセント、スライダーの44.6パーセントとともに傑出した数字だ。

 エンゼルス戦では大谷翔平、マイク・トラウトなどを牛耳った。見た目に、スプリットのように真っすぐ落ちるチェンジアップと、左打者に対して外側に逃げていくものと2種類あるようだが、前田はこう説明した。

「ストライクを取りにいったときと、三振を取りにいったときで、腕の振りだったり、感覚的に少し変えている部分がある。ただ投げている年数が違うし、スライダーほどは操れてはいない。だいぶ安定してきましたけど、まだ良いときと悪いときの差があります」とのこと。

 ドジャースの専属解説者でメジャー通算204勝のオーレル・ハーシュハイザー氏は「腕の振りが速いし、ボールがよく動く。ザック・グリンキーのチェンジアップみたいだ」と絶賛していた。相手を牛耳るピッチング内容は、被本塁打数にも出ている。昨季と比べると半分以下だ。ちなみに昨年の前田はカッターやツーシームを増やし、メジャー流に動くボールをストライクゾーンに投げて打たせて取ろうとした。

 ゾーン率は48.5パーセントだったがこの実験は防御率4点台が示すようにうまくは行かなかった。一方、今年は前述の通り2種類のチェンジアップが効いて、ボール球をうまく空振りさせられている。ゾーン率は45.1パーセント、空振り率は27.4パーセントから31.5パーセントと上昇した。加えて本塁打を防げるようになった理由を本人がこう説明してくれた。

「日本みたいに低めだと長打がないという考えは通用しない。どっちかというと、こっちは低めが好きな打者が多い。ピッチャーは昔から低めに投げろと教え込まれていて、意外と低めには投げられる。一方で高めのストライクに投げるのはすごく技術がいる。無意識に投げるとボールは低めに行くので、それを打たれることがたくさんあった」

 長年のクセでついつい低く投げてしまう。日本では正解でもメジャーではそれで失敗した。そのこで意識を変えた。「自分の持っているボールをしっかり相手の最も苦手なところに投げ込む。ミスをいかに減らすか。ミスをしても、できるだけ長打を打たれないミスにするかが大事」と前田。 7月11日のパドレス戦、前田は6回途中まで1失点9奪三振、被本塁打0の好投。防御率は3.13とよくなっている。

写真=Getty Images
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