今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 確執深まる金田と豊田
今回は『1963年5月20日号』。定価は40円だ。
前回に続き、巨人のON砲が止まらない。
5月6日時点で王貞治が打率.425の10本塁打、打点27、
長嶋茂雄が.409、9本塁打、25打点。3部門とも、すべてセのトップ2だ。この2人にけん引され、巨人は完全に独走状態に入ろうとしている。
今回は、この年の5月2日に公示された不思議な高額所得者リストが特集されている。
球界のトップ5は以下だ。
1位
門岡信行(
中日)2381万円
2位
竹中惇(中日)2374万円
3位
三宅秀史(
阪神)2031万円
4位
吉田義男(阪神)2014万円
5位
是久幸彦(東映)1963万円
長嶋、王の名前はなく、1、2、5位は、知らない名前かもしれない。
過去も同様の傾向があったのだが、要は新人への高騰した契約金からだ。
門岡、竹中、是久は62年入団の新人。1年目に10勝を挙げた門岡以外ほぼ実績はなかった。
ただ、多少のカラクリはある。62年入団の新人では、東映で20勝をマークした
尾崎行雄が最大の大物で、尾崎の申告は1466万円だったが、契約金は4000万円はくだらないというウワサだった。
高額になった大物新人の場合、数年に分けた割り勘で払っていたらしい。
三宅、吉田は優勝球団・阪神の10年選手。三宅には多少、ケガへの配慮もあったのかもしれない。
ただ、あれだけゴネ、2000万以上のボーナスをもらったと言われた
小山正明は、たった470万。これは交渉が越年したので、その分の申告が翌年回しになったからだという。
阪神では、右腕の治療のため入院していた
村山実が4月29日に退院。しかし5月に入って指先に激痛が走り、抹消閉鎖性動脈硬化の診断で再び離脱となった。
村山は真っ青な顔で、
「どうしていいか、さっぱり分からなくなった」
と語っている。
5月4日、皇太子殿下が観戦された試合でこの年3勝目、通算299勝目を挙げた国鉄・
金田正一だが、西鉄から移籍1年目、
豊田泰光との確執はかなり深刻になっていた。
試合中、劣勢の場面で登板し、自ら同点本塁打を放った金田は、やる気が感じられなかった豊田の守備に対し、プツン。チームが勝ち越した後、「もうええやろ」と自ら勝手に交代を決め、「あれでもプロか」と吐き捨てたという。
そうだ。3000万とも書かれたことがある金田がなぜトップ5にいないのか。これも分割のボーナス的な金額が加算されたものだったのか、副業があったのか、はたまた、単なる記事の間違いか。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM