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ベースボールゼミナール

足を高く上げるフォームのメリットは?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.ヤクルトの小川泰弘選手は左足を高く上げる独特のフォームで投げています。藪さんは連続写真などでも足はなるべく高く上げるほうが良いと解説していますが、足を高く上げることにはどのようなメリットがあるのですか? コントロールが乱れる心配はないのでしょうか。(東京都・19歳)



A.足を高く上げることで大きなエネルギーを獲得。得られたエネルギーを爆発的な推進力に変える。


イラスト=横山英史


 人類の進化を専門とする生物人類学者のニール・ローチ博士は、大学生のピッチャーを中心に研究した結果、肩は主に股関節部と臀筋が生み出したエネルギーの集配センターであるということが確認され、次のような言葉を残しています。

「腕だけが腕なのではない! 足から指先に至る全体なのだ」と。ピッチングは確かに腕を使って投げるものですが、腕力のみに頼ったフォームでは限界があり(スピードだけの話ではありません。スタミナや球威、制球力を含めての話です)、“足で投げる”ことの重要性を訴えています。

 足で投げること、下半身の重要性はこのような研究で証明されなくても、実績を残した多くのピッチャーが、自らの経験で示してきました。ただ、近年は小手先のコントロール、バランスばかりを重視して、小さくまとまったフォームのピッチャー(とそのような指導も)が増えてきたのも事実です。それでもある程度の計算が立つので、球団サイドもOKとなるのでしょうが、本当はもっと大きな可能性を秘めたピッチャーの、成長の芽を摘むことになるのではないでしょうか。

 質問にある高く足を上げることも、大きなエネルギーを獲得することにつながります。もちろん、バランスを保たねばならず、ベースとなる強靭な肉体と、足を上げるまでのムダのない動作が必須ですが、足を上げたほうが、例えば、ヒザが胸の辺りまで上がるピッチャーと、腰までしか上がらないピッチャーとでは、獲得できるエネルギーも異なるはずです(同じ身長、体重の場合)。

 ヤクルト・小川選手のフォームの原型(?)となったノーラン・ライアンは、右足に重心を置いているから、左足がフリーフットでいくらでも高く上げられます。しかも、左ヒザを左の肩に当てるくらい(ヒジは内側収納しています)の高さです。ここで得られた位置エネルギーを、バッター方向への推進力(並進運動)に変えていきます。この間にムダがなければ、ボールに大きな力を伝えることができますよね。

 今季からは一連の動作であれば、二段モーションが反則とはならなくなりました。これまで足を高く上げる時間が取れなかったピッチャーには朗報で、いくらでも高く上げることができるようになりました。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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