いよいよ第100回の大きな節目を迎える夏の甲子園。その歴史にこそ届かないが、80年を超えるプロ野球を彩ってきた選手たちによる出身地別のドリームチームを編成してみた。優勝旗が翻るのは、どの都道府県か……? 主砲は世界のホームラン王
47都道府県別の人口で唯一1000万人を超え、ぶっちぎりのトップに君臨する東京都。2020年にはオリンピックを控え、国を挙げての地方創生など微風とばかりに、それどころか都内である多摩地域や伊豆諸島、小笠原諸島などの島嶼部を振り落としかねない勢いで突っ走るニッポンの首都だ。
人口が多いということは選手の母集団も比例して多いはずで、出身プロ野球選手のチームも、ぶっちぎりの最強集団が形成されそうなものだが、優勝候補であることには間違いないものの、“首都・東京”のような独走は難しそうだ。だから野球はおもしろい。
【東京ドリームチーム】
一(遊)
鳥谷敬(
阪神)★
二(二)
井口資仁(ダイエーほか)
三(右)
榎本喜八(大毎ほか)
四(一)王貞治(巨人)
五(捕)
田淵幸一(阪神ほか)
六(左)
西沢道夫(
中日ほか)
七(三)
江藤智(
広島ほか)
八(中)
飯田哲也(
ヤクルトほか)
九(投)
杉下茂(中日)
(★は現役)
他の道府県から人が集まる東京都らしく、奇しくも各チームから代表が1人ずつというようなラインアップとなった。徳川家康が江戸城に入って以来、現在に至るまで繁栄を続けている東京都だが、いわゆる江戸前の文化を残しているのは下町エリアなど一部に限られていて、その一角、現在はスカイツリーが建っているあたりに生まれたのが“世界のホームラン王”王貞治だ。
ここでも主砲を担うが、守備位置の一塁には強打者が集中している。中日の“二刀流”西沢道夫と、史上最年少で通算2000安打に到達したヒットメーカーの榎本喜八だ。いずれも打棒は捨てがたく、外野は2試合しか経験のない王を一塁に残し、13試合の榎本と14試合の西沢を外野へ。外野守備に不慣れなレジェンドをフォローする外野の要には名手の飯田哲也を入れた。
王が残った内野守備は盤石で、現在は
ロッテ監督の井口資仁(忠仁)が二塁、長距離砲の江藤智が三塁、現役で現在は三塁を守っている鳥谷敬が本職の遊撃、“ホームラン・アーチスト”田淵幸一が捕手と、すべてゴールデン・グラブ経験者だ。
控えにも捕手の
大矢明彦(ヤクルト)や現役で二塁手の
菊池涼介(広島)に三塁手の
小谷野栄一(
オリックス)ら名手がそろう。西沢と榎本の外野守備が不安なら、一方を現役の
鈴木誠也(広島)と入れ替えて、もう一方を温存してもいい。どちらも代打の切り札として控えていたら相手チームにとっては相当の脅威だ。
レジェンドとメジャー経験者の三本柱
エースには現役の解説者として野球界に貢献を続けている杉下茂を据えた。三本柱を形成するのはメジャーでも結果を残した現役の松坂大輔(中日)と、マリナーズでプレーを続けている
岩隈久志(
楽天ほか)だ。
“江戸っ子投手”
土橋正幸や“下町のエース”
成田文男(ロッテほか)ら、いかにも東京らしい好投手もいる。
クローザーは
武田一浩(
日本ハムほか)でもいいが、松坂や岩隈をエースに据えて、救援登板も多かった“フォークの神様”杉下にクローザーを任せてもおもしろいかもしれない。
打順は実際の経験も踏まえて組んだが、王を筆頭に四番打者に適性のある打者が並び、打線の破壊力は最強だ。通算本塁打が3ケタに届いていないのは飯田のみで、その飯田を筆頭に井口、鳥谷が通算盗塁で3ケタを超え、通算打率でも王が3割、榎本も打率.298と安定感も兼ね備えている。
ただ、四番打者タイプが打線に並び、スターぞろいで大味な感があるのも“都構想”を掲げる大阪府と似たチーム構成。最強打線が大量得点を稼がなければ、いぶし銀が並ぶ職人チームにスキを突かれる不安は残る。
写真=BBM