週刊ベースボールONLINE

MLB最新戦略事情

【MLB】大物遊撃手をトレード獲得したドジャースの補強戦略とは?

 

シーガーの抜けた穴を埋めるため、強打の遊撃手・マチャドを獲得したドジャース。その用意周到な戦略はしたたかだった


 昨オフ、ドジャースがFAのダルビッシュ有投手に高額のオファーを出せない理由として、ぜい沢税が原因と話題になったのを覚えているだろうか。

 ぜい沢税は何年も続けて設定された一定の年俸総額を超えると、超過分にかかる税率が上がる。現行の労使協定では、1回目が20パーセント、2回目が30パーセント、3回目が50パーセントといった具合だ。ただし1度リミット以下に抑えれば、次に超過したときの税率は1回目の20パーセントに戻る。

 2013年から17年まで5年連続超過で、近年最高税率を払い続けてきたドジャースは、18年シーズンこそ、リミット(1億9700万ドル)以下に抑え、パーセンテージを下げたい狙いがあった。彼らが注意を払っていたのは7月のトレードデッドライン用に、十分な枠を確保しておくことだった。半年前では、誰がケガをして戦列を離れているか、どこが補強ポイントになるかまったく予測がつかない。だがそれでもいざとなったら動けるようにある程度の枠を確保しておく。そして今にして思えば、実に周到に備えていたと思う。

 ドジャースは開幕直後、トミー・ジョン手術でコーリー・シーガー遊撃手が使えなくなった。大変な痛手だが、今回トレード市場一番の大物マニー・マチャド遊撃手をオリオールズから獲得できた。マチャドの今季の年俸は1600万ドルだが、払うのは残り分630万ドルである。ドジャースのサラリー総額は、オールスター前まで1億8150万ドルだったから、まだ十分に枠が空いていた。

 プラス、ミドルリリーバーも弱点。そこも補強するのだろう(現地時間7月25日時点)。ただ実を言うと、もう一つ気をつけねばならない大事な要素があった。前田健太投手の出来高だ。この分は公式戦が終わってからの換算だが、すでに開幕ロースターに入って15万ドル、先発数が15試合を越え100万ドル、イニング数が90を越え25万ドル、合計で140万ドルをゲットした。今後先発投手で活躍を続ければ金額はさらに増えていく。最大額の1250万ドルは無理としても半分くらいは行きそうだ。

 そう想定すれば、ミドルリリーバー補強に枠を増やすべく、給料が高く、戦力的には必ずしも重要でないベテラン選手をトレードするかもしれない。ローガン・フォーサイス二塁手、柳賢振投手などが候補である。いずれにせよ、半年前から用意していたトレードデッドライン戦略が功を奏し、前半戦一時は同地区のダイヤモンドバックスに8.5ゲーム差をつけられていたが、今ではリーグ優勝の最有力候補になってきた。

 本当にしたたかなチームだ。したたかさという点でもう一つ指摘しておきたいのはファームシステムだ。今回、マチャドの獲得合戦でブリュワーズ、フィリーズ、ヤンキース、ダイヤモンドバックスらライバルが多かった。にもかかわらず、ドジャースは、ウォーカー・ビューラー投手はじめ若手トッププロスペクト3選手は出さずに、勝利を収めた。「他球団が興味を示すようにプロスペクトを育てている。そこは戦略的にやっている」と他球団の関係者。

 昨年のトレードデッドラインでも、トッププロスペクトは出さずにレンジャーズからダルビッシュを獲得したのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング