いよいよ100回目の夏の甲子園が始まる。『週刊ベースボール』では、オンライン用に戦後の夏の甲子園大会に限定し、歴代の名勝負を紹介していきたい。 あと1人となったが……
1982年8月8日
第64回大会=1回戦
佐賀商(佐賀)7−0木造(青森)
グラウンドもスタンドも一種、異様なムードに包まれていた。夏の試合でだれも成し得ていなかった大記録、完全試合が佐賀商・新谷博(のち
西武ほか)によってほぼ樹立されようとしている。あと3人――。
9回、木造の攻撃。先頭の七番・川内福一の打球は鋭く三遊間へ飛んだが、遊撃手・小林満喜の美技で1アウト。八番打者は三振であと1人だ。
九番の代打に、青森大会では出場のなかった背番号15の1年生・世永幸仁が送られる。2ボール1ストライクの4球目、この試合94球目。「初めての打者には内角の速球を投げておけば打たれないだろう」(新谷)と投じたボールは
シュート回転し、世永の右腕を直撃。大記録はその瞬間、消え去った。
新谷は続く打者を遊ゴロに抑え、完全試合こそ逃したものの夏の大会19人目となるノーヒットノーランは達成した。
写真=BBM