駒大苫小牧OBの本間氏による始球式で、あの「ハンカチ」が登場した!!
頭をかきながら、本間篤史氏はインタビュールームに入ってきた。
「いや〜すみませんでした……(苦笑)」
謝罪する必要などない。個性あふれるレジェンド始球式にスタンドは盛り上がった。
本間氏は駒大苫小牧で2年夏優勝(57年ぶりの夏連覇)、3年夏は主将として準優勝と、右の長距離ヒッターとして活躍した。絶対的エース・
田中将大(現ヤンキース)と同級生である。プレー中もメガネをかけ、誰からも愛されるキャラクターであり、チームの枠を越え人気があった。
亜大を経て社会人野球・JR北海道(17年からJR北海道硬式野球クラブ)では、昨季限りでユニフォームを脱いだ。3年夏の甲子園では早実との決勝で、引き合分け再試合を経験。
「決勝を2試合できたことは印象に残っています。あの試合で学んだことが多く、あれがあったから、今、こうして立てている。12年前の決勝以上に緊張しました……(汗)」
とはいえ、仕込みは万全だった。大きく振りかぶると、右ヒザを曲げて、1バウンド投球!!
「自分の中では100点。似たとは思うんですけど……(苦笑)。早実の同級生、高校の同級生とも話して『使ったほうが良いのでは?』という話になりまして……」
本間氏は当時、右足を折り曲げるフォームだった早実・
斎藤佑樹(現
日本ハム)の了承を得るために連絡を入れると、「ハンカチでしょう!!」と、逆に切り返されたという。
「なら、使っていいんだ!!」。本間氏は投球を終えると、ポケットに忍ばせていたハンカチを取り出すと、顔を拭った。12年ぶりの「ハンカチ王子」である。そして、駒大苫小牧関係者への感謝の思いを込めて、右手を上げるお決まりの「NO.1ポーズ」で締めている。
大きく体を使ったワインドアップは、田中将大(現ヤンキース)をモノマネしたものだったようだ。しかし、多忙であると気を使った本間氏は、あえて連絡を取らなかった。
「確認を取れていないので、名前は言えませんが、皆さん(報道陣)が思っている人を意識しました。振りかぶりから、足を上げるまで、満足できました」
初めての甲子園マウンドに「エースの田中将大はすごいな。すごい気持ちがあったんだなと思いました」と話した。
記者会見を終えると本間氏はつぶやいた。「苦情のLINEが来ているかもしれない……(汗)」。いつも周囲を和ませる癒しキャラは健在だった。甲子園の真剣勝負を前にして、どことなく、のんびりとした空気感が、ものすごく心地よかった。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎