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2018甲子園

「剛」と「柔」 2つの顔を披露したドラフト候補スラッガー、近江・北村恵吾

 

豪快かつ、うまさと粘りを備えた打撃


近江の四番・北村恵吾は、プロ注目のスラッガーで高校通算44本塁打を誇る。甲子園2試合で剛と柔を披露している


2018年8月13日
第100回=2回戦
近江(滋賀)4x−3前橋育英(群馬)

 湖国のスラッガーが、2つの顔を見せた。

 近江の四番・北村恵吾は智弁和歌山との1回戦では左越えの2本塁打を放ち、センバツ準優勝校を下した。これで、高校通算44本塁打。

 ネット裏から視察したヤクルト・橿渕聡編成部スカウトグループデスクは「パンチ力があるし、ボールをとらえるツボがあるから、長距離砲として面白い。打力という一芸で十分、可能性がある」と興味を示した。

 ただ、本人は“表向き”には本塁打にこだわりがない。献身的な姿勢が求められる高校野球で、自身のセールスポイントはあえて“封印”する。とにかく強調したいのは「低い打球。ゴロが間を抜けていくのが理想です。引っ張りにいくことはなく、軸回転を意識してスイング。右中間へ強い打球、それを意識しています」と、チームプレーに徹している。

 研究熱心だ。初戦突破を遂げ、前橋育英との2回戦が決まると、対戦校のビデオを3回、1試合を通しで見た。「さらっと流して見るのが1回目、投手のフォーム、クイックなどを確認するのが2回目、そして最終確認するのが3回目です」。コンディショニングに加え、心と頭も活性化させてから試合本番に挑む。「準備の大切さ」を理解しているあたり、プロとしての資質が備わっていると言っていい。

 前橋育英との2回戦では初回に右翼線へしぶとく落とす先制適時打。3対3で迎えた9回裏も右前打でつなぎ、チームのサヨナラ勝ちに貢献した。初戦では豪快な打撃を披露した一方で、この日はうまさと粘りを発揮。この2本の安打には、確固たる技術があった。

「バットが内から出て、強く振れているからライン際に落ちる。仮に体が開いていたら、ポップフライになっていたと思う。良い形でスイングできた結果です」

 今夏の2戦で「剛」と「柔」を見せた北村。この試合は絶対、落とせない理由があった。

「今日、負けていたら、智弁(和歌山)の勝ちは水の泡になる。世間の目としては『まぐれで勝ったやろ!!』となる。近江の評価を上げるためにも、勝たないといけなかった」

 今夏のチーム目標はベスト8で、国体出場の権利を勝ち取ることにある。あと1勝。スタンドで全力で応援してくれる仲間と、秋まで野球をしたい。ユニフォームの「近江ブルー」が「目立って、大好きです」と、湖国のスラッガーは練習で積み上げたフルスイングを最後まで貫いていく。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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