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【MLB】約15年ぶりの観客数減少はフライボール革命が要因か?

 

1試合の観客数が減少した要因として、チーム再建で若手を育てるチームが増えたことと、フライボール革命で、三振が増えたことも、その要因だと見られている(写真はイメージ)


 今季のMLBの試合の平均観客数が2003年以来の3万人以下に落ち込みそうだ。7月まで、最初の4カ月で平均2万8863人。昨年7月までの3万453人に比べると5.2パーセントのダウンになる。

 オールスター・ゲームの会見で、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは天気が悪かったことを理由に挙げていた。確かに3月、4月は寒くて、摂氏4.4度以下の試合が多かったし、前半は雨天の日が続いて44試合が延期になった。だが一番大きな理由は、再建チームの増加ではないかと思う。

 一番ひどいのはマーリンズで1試合あたりのホームの観客数は平均9809人平均(キャパの26.2パーセント)、昨年の2万395人(54.2パーセント)から半分以下に減った。オフの間にジャンカルロ・スタントンはじめ、レギュラーを次々にトレードしたのだから当然の報いである。

 マーリンズの7月までの戦績は46勝63敗だった。ほかに20パーセント近く減らしたのはロイヤルズで昨年の2万7754人(73.2パーセント)から今季は2万871人(55.1パーセント)、ブルージェイズは昨年の3万9554人(80.3パーセント)から2万9981人(60.9パーセント)となっている。ロイヤルズは15年の世界一チームだが、16、17年とア・リーグ中地区3位で、今季は主力を放出、再建に踏み出した。ここまで34勝73敗で地区最下位である。

 ブルージェイズは決して最初からあきらめたわけではないが、同地区のレッドソックスとヤンキースが圧倒的に強く、序盤で大差をつけられたために、16、17年連続で300万人動員の熱心なファンの足も遠のいた。

 優勝を最初からあきらめているチームでは、ホワイトソックスが平均1万8523人(46.5パーセント)、レンジャーズが2万7250人(55.4パーセント)、オリオールズが2万668人(45.5パーセント)である。コミッショナーは主力選手を手放して再建に入ることもチーム戦略の一つと認めているが、それが行き過ぎ観客数の減少が著しいようなら、放ってはおけないだろう。

 観客減少のもう一つの要因と見られるのは、打撃力の低下。7月までの打率は.248で、1972年の.244以来、最低の数字になりそうだ。三振数より安打数の方が下で、最初の3カ月は2万7285三振に対して2万7218安打だった。三振数はこのペースで行けば、昨年の4万104個を上回り、11年連続でワースト記録更新となる。

 コミッショナーはこの件については前から問題視しているが、守備シフトゆえに、打者が良い当たりをしてもアウトになり、豪腕のブルペン投手が次々に出てくるため三振数だけが積み上がる。コミッショナーは同じ会見で「頭の良い人(フロント)たちが勝つために考えてやっていること。ただ何らかの手を打つことも考えないといけない」と話していた。

 それはシフトの禁止やリリーフ投手数の制限である。平均観客動員数の3万人割れは由々しき事態。もっとバットに当たって走者が塁を駆け巡るアクションの多い野球に戻したい意向なのだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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